河村甚の連載コラム「チームづくりレシピ」

第95回 『起こった事、感じた事を忘れずにその意味を考える 』

「行動する事」と「考える事」は自分にとって、とても大事な人生の指針です。考えているだけではなく、言葉だけでもなく行動して形にすること。そして受け取ったあらゆる情報や体験をそのまま鵜呑みにするのではなく、しっかりと考え、複合的に考え、理解を深めることを大事にしています。そして常にこれを繰り返し続けます。

今、東日本が大きな災害に見舞われています。地震のあった当日は東京もただごとではない状態でした。何らかの被害にあった皆さんはそこで何を感じたでしょうか?何が起こったでしょうか?この災害で私たちは大きなものを失っています。ですから何事もなかったかの様に日常に戻ってしまうのではなく、失ったものと引き換えに得たものに目を向け、大事にして行かなければなりません。

この時に自分が感じたのは人とのつながりがいかに人にとって大事なものであるかを実感しました。状況把握が出来ない中、回りに居る人たち同士助け合ったり、お互いに対してとても優しくなったりする場面を目にしました。人と人とが自然につながり合おう、関係をつなごうとするのです。なんとか危機を脱しようという同じゴールを共有した時には、たとえ仲が悪い者同士でも、一瞬で結束し、助け合います。
チームビルディングで現状認識とゴールの共有が大事だというのはまさにこのことです。いまある状態から何が何でも成し遂げなければならないゴールを共有したときにはくだらないしがらみも対立も何も関係なく、始めて会った人でも言葉の通じない相手でも関係なくチームになります。チームの関係性を良くするのがチームビルディングではなく、チームビルディングの結果、メンバー同士の関係性が良くなるのです。
災害時には危機的状況から何とか安全を確保しようという共通のゴールが生まれます。そしてお互いにそれが共通のゴールである事を知っています。平時のチームでも全く同じ事です。なんとしても成し遂げる共通のゴールを持っていて、お互いがそれに本気で向かっている事を知っている。チームはそういう状態の時に生まれます。難しいのは、「この危機を共有している者同士、なんとかして安全を確保しよう」と言うほどの目的意識と認識共有が普段はなかなか作りにくいのです。

人は孤立無援では生きて行けません。集団で社会を形成し、支え合いながら生きて行く生き物です。完全に一個体として存続して行く事はできません。本来、人はチームとなり、支え合う様にできています。しかし、高度に仕組みが整った社会では人の集まりで作られた仕組みに支えられているのにそれに気づきません。たとえば、誰とも話をしなくとも、食べ物が手に入ったり、住む場所が手に入ったりしてしまうのです。人が作った仕組みに支えられていることも忘れて、自分が人を支えている事も忘れて、そうすると感謝もしないし感謝もされない人になってしまいます。

日本が直面するこの大きな災害を教訓として受け止め、お互いがお互いを尊重しあう社会に生まれ変わって行かなくてはなりません。政治家のせいにするのではなく、世の中のせいにするのでもなく、私たち一人一人が社会に対して責任を持つべきです。社会はそこにもともと存在するものではなく、私たち一人一人の集まりが社会を構成しています。政治家も元々政治家だったわけではなく、私たち一人一人が選んで政治家が生まれます。

世の中はすべて私たち次第で変わります。そのためには私たち一人一人がしっかりと「考える」、そしてしっかりと「行動する」事が必要です。もしこの災害のなかで支え合う事や人とのつながりの大切さを感じたら、そこで感じたものをぜひ覚えておいて下さい。その時の感情を覚えておいて下さい。

この大災害で起こった事、感じた事を忘れずに、その意味を考え、更に深く考えることで、私たちは私たち自身と社会の在り方をより良くして行けるはずです。

第94回 『「やらなきゃならない事」のために自由を失っていませんか? 』

組織で仕事をするからには当然の様に「やらなければいけない事」がたくさん出て来ます。そんな中で自分を犠牲にして苦しんでいるという話もよく耳にします。当然の事ながら、やらなければいけない事を放っておいて良いわけではないですし、上司の言う事に逆らってばかりでは組織として機能しなくなってしまう事でしょう。誰もが自分の好き勝手にやっていては世の中うまく回りません。
しかし、自分の力ではどうしようもない不自由さの中で自由を手に入れるための方法があります。それは全ての責任を投げ出してしまう事とは正反対の事です。つまり、全ての選択を自らの責任と捉えることで自由を手に入れる事が出来るのです。

外部の力、不可抗力で自分は何のコントロールもできる立場に無く、何の選択の権利も無い様に見える時でも、自分の捉え方次第で全て主体的な選択に変えて行く事が出来ます。この自分の選択は他の誰も邪魔することは出来ない、完全な自分のコントロール下にあるものです。
例えば、「上司に無理な仕事を押し付けられて断る事は出来ないので嫌々やる」という様な時にもこれを主体的に捉え直し、上司の選択で自分には力がないという状況から自分の選択として捉え直し、コントロールする事が出来る様になります。
このためには、次のようなステップで捉え直す事が出来ます。

1) まず、その嫌々やらされていることが嫌だとしたら、必ず何かと比べてこちらの方が嫌だと言う事が出来ます。それが何なのかを確認します。
「勝手にこっちの都合も考えず仕事を無茶振りされる」より、「自分で仕事のペースをコントロールしたい」などという選択肢が考えられるかもしれません。

2) この時点で嫌々と思っていたものも実は複数の選択肢から自分で選択していた事を確認します。

3) そこでなぜ自分がその選択肢を選んでいるのかを考えます。不可抗力ではなく、必ず何か自分のためになる理由でその選択肢を選んでいるはずです。「自分は〜」「自分が〜」など、自分が主語になる理由を考えます。

「自分が上司から良く思われたい」「自分がこの組織にいる価値を示したい」

4)さらに自分のためになる理由を上乗せします。

「この無茶振りを嫌な顔一つせずやり遂げたら、この会社の中での自分の価値が上がる」「これは自分にとって始めての挑戦だから自分の成長に繋がる」などといった自分のためにその選択肢を選ぶ理由を考えます。




これはあくまで一例ですが、他にも人の責任にしていた事を自分の責任として取り返す方法はあります。

このようにして全ての選択の責任を自分の手に取り戻すことの何が良いのかと言えば、その反対では全て人のせいにして、自分の自由を放棄してしまう事になるからです。責任を放棄する癖がついていると、常に人や環境のせいにして言い訳をしたり、自分で責任を負わないまま権利だけ主張するようになってしまいます。そんな状態では組織の中で求められる存在にはなれず、社会の中で淘汰されていってしまいます。

つまり、物事を主体的に捉え、責任を負って行動することを選択しない限り、生き延びて行くことが出来ないのです。


もちろん、そのような選択をし続ける事がつらいとき、大変な時もあると思います。誰しも自分のキャパシティ以上の選択はできません。そんな時は無理せず弱音を吐いたり、誰かに頼ったりしても良いと思います。それでも長い目で見て、主体性を持った選択をして行けば良いのです。一時的には「今は自分のキャパシティを超えているから弱音を吐くぞ」という事を自分で選択してもかまわないと思います。
そのようにしてコントロールしながら、主体的な選択を続けていると少しずつ自分のキャパシティも広がって行きます。

そして「やらなきゃならない事」も自分の捉え方次第で自分の自由を広げるために活かせる様になって行くはずです。


第93回 『チームを動かしたい!でも動かない!』



チームを動かすためにあの手この手で頑張ってみてもなかなか動いてくれない。主体性を持ってもらうために押しつけの指示はしたくない。でも主体的に動いてもらいやすいようにサポートしているつもりが、待っていても思う様に動いてくれない。
そんな悩みも良く聞きます。「そもそも自分はリーダーに向いていないのかもしれない」とあきらめる前に出来ることを考えてみませんか?
まず大事なことは、人はあなたの思う通りには動いてくれないということです。人があなたから影響を受けることはもちろんありますが、人の考えをコントロールすることは出来ないのです。
その前提に立った上で、人が影響を受ける2つのアプローチについて考えてみましょう。

ひとつは「明確な指示を受けて動く」
そしてもうひとつは「自分で考えて主体的に動く」です。

たとえば、単純労働では人は明確な指示を受けて動いています。確固たる知識や経験に基づいて進むべき道を示してもらうことで人は動ける状態になります。「こうすればこうなる」と示してもらうことで人は安心するのです。
ところが、全ての物事において単純な指示で動けるわけではありません。自分で考えて主体的に動くことが求められる場面が多くあります。こういう場面では仕事のやりがいがベースとなり、自分がどのように全体に貢献しているのかが重要となります。
多くの場合に、どちらか一方と言うよりは、この両方のアプローチを組み合わせて動いているはずです。

難しいのは、「自分で考えて主体的に動く」ということを相手に直接的には促す事が出来ないということです。一生懸命押しても動かない。引いても動いてくれません。かと言って黙って待っていても動きません。
ではどうすれば良いのかと言うと、簡単には以下の4つのステップに沿って取り組むことが出来ます。

1) 一定のルールの範疇で自由に動ける場を作る。
メンバーの主体的な意思でゴールへ向かうプロセスを生み出せる状態。何がOKで何がOKではないのか?のルールを明確に示すことで安心できる場となります。その中で、メンバーの主体的な判断、行動を歓迎します。

2) ビジョンを示す。
実現したいこと、その状態を相手に伝わるように伝えます。やり方を示すのではなく、どこへ向かうのかを示します。相手がその状態を思い描き、共感できる状態を目指します。

3) 一緒にやろうと促す。
メンバーの力がビジョンの実現に貢献できることを伝え、行動を促す。 リーダーの弱いところを助けてほしいと頼むことも時には必要です。またある時は具体的な行動を示して背中を押してあげることも必要です。

4)リーダーが最後は責任を負う事を示す。
メンバーにまる投げして、自分で責任を負おうとしないリーダーにはだれもついて来ません。リーダーはプロセスにではなく、結果に責任を負います。
メンバーが責任を負おうとしている時に奪い取らないこともとても大事です。

どうしていいのか分からなくなった時、この4つのステップを一つ一つ見直し、確認してみてください。何か改善できるところがあればそこから手をつけてみてください。その結果はそう簡単には出ませんが、必ず良い方向へ向かうはずです。

第92回 『対立から逃げない』

どんな組織でも意見の対立、考え方の対立は起こります。逆にそれが起こらないような組織は進化成長して行く事が出来ないでしょう。しかし、対立はつらいものです。「どうして相手は自分の言う事が理解できないのか?」「どうしてあんな考え方をするのだろうか?」とお互いの意見が食い違い、それによって気力も体力も消耗してしまいます。
しかし、この対立を無いものとして隠してしまうのは良くありません。なぜならそこにチーム内の認識ギャップがあるからです。認識ギャップはチームで共有し、それを超えて行く事でチームは進化成長してゆけるのです。この気力も体力も奪う対立をどのようにチームの成長の力に変えて行けば良いのでしょうか?

まず、対立を前にして、自分がそれをどう捉えているのかを認識する必要があります。
「この対立を避けようとしているのか?」
「自分が正しいので相手を言い負かそうとしているのか?」
「自分が間違っているけれど、なんとか正当化して相手を言い負かそうとしているのか?」
「自分の考えを相手に伝えたところで伝わらないからあきらめているのか?」
対立を前にした場合に、人によって、また時と場合によって色々な捉え方をしているはずです。対立の当事者となった時に、これが見えなくなってしまいがちですが、まず「自分がこの対立をどうとらえているか?」を認識することによって一段高いところから自分を捉えることができます。

そして一歩引いた視点で相手の考えを理解することに努めます。多くの場合に「相手の考えていることは分かっているけれど、相手は自分の考えが理解できていない」という捉え方になっています。これが双方でそう思っている状態なので対立が起こるのです。ですから、相手の考えが分かっているつもりでも、「自分の見えていない何かを相手は見えているのかもしれない」「表面上にある問題とは違う事が本当は問題なのかもしれない」という見方で相手の考えを理解することに努めます。

次に、自分の考えを伝えることに努めます。「相手は分かってくれない」とあきらめずに、素直に自分の考えを伝えることに努めます。相手に伝えるときには事実だけでなく、感情が伝わるように伝えます。対立していると感情的になりがちですが、「相手を打ち負かす」ことや「自分を正当化する」ことに感情的になっても逆効果です。相手には見えていないかもしれない自分の考えに感情を込めて伝えるのです。一番良くないのは「どうせ伝わらない」とあきらめてしまう事です。あきらめずに伝え続けることが重要です。

このようにして相手の考えを理解することに努め、自分の考えを伝えることに努めてゆくと、考え方のギャップが見えてきます。ここで重要なのがチームのゴールです。自分たちはどこを目指しているのか?何のためにやっているのか?ということに立ち返ります。どんな組織も、その組織が存在している理由があります。また目指しているあるべき姿があるはずです。明確なものが何もない場合でも「自分たちが一緒にこの組織で仕事をしていて、自分たち全体のためにとって良いことは何だろうか?」という見方を軸に置きます。そしてここに立ち返って考え方のギャップから何をどう選択して行けばいいのかを判断します。それでもまだ見えない時には同じサイクルを繰り返すことです。自分か相手のどちらか一方が本気で考えていれば同じサイクルを繰り返しても かならずスパイラル状に前に進んでいます。

大事なことは多様な視点、考え方、背景にある常識などを掛け合わせて、その中で目指すべき方向に向かうのに良いものが進化してゆくようにすることです。進化は固定的、閉鎖的環境の中では起こりません。より進化成長してゆくために多様なものが混ざり合い、活かしあい、進化して行く環境を作るべきです。
組織の中で対立が起こるということは対立が起こらない組織や対立を起こせない組織に比べて良い組織です。自然界のように厳しくあるものの、進化成長を促す良い環境にあると言えます。

そして最後に、対立を活かす上で一番大事なこと、それはお互いに敬意を持ち、相手を大事に思う気持ちを持っていることです。いくら意見を戦わせても、感情的にぶつかり合ってもかまいません。本気で怒っても泣いても良いと思います。しかしその奥に同じチームで同じゴールへ向かって進む仲間に対する敬意が必要です。しかしその逆も然りで同じゴールを本気で共有している仲間であれば、どんなに表面上対立していようとお互いに対する敬意が生まれてきます。対立はお互いが本当に同じゴールを目指していることを確認し合う良い機会でもあります。

対立から逃げずに、本気で前へ進もうとする時に組織が進化するだけでなく、自分自身も進化成長して行くことでしょう。




第91回 『迷った時は本質に立ち返る』

チームで仕事をする時には複数の人間が集まりながら、あたかも一人の人間かのように選択/決断を繰り返して行かなくてはなりません。当然のことながら複数の人間が集まっているので違った意見や判断もあるはずです。これは相手が違う人間であれば意見の対立のように見えますが、チームを一人の人間として見た時にそれは頭の中で「A案もいいけどB案もあり得る」と迷うことと同じです。チームが迷っている状態(又は対立している状態)からどのように脱して、次のアクションへ移ることができるのでしょうか?

まず、迷っている状態や対立するような選択肢がある状態そのものは悪いことではありません。それよりも悪いのはむしろひとつの案や選択肢しか見えていない状態で決断することです。そんな時には敢えて逆張りの視点で反対案を考えてみるべきでしょう。そうすることでより良い選択をすることができます。
もちろんスピードが求められる場面ではそんなことを考えている余裕も無いこともあると思います。そうでない時は迷ったり、反対案を投げ合ったりする方が良い結果に繋がります。

そうは言っても、延々と迷い続けたり、対立したまま拉致の開かない状態では物事は進みません。悩み、迷い、対立しても次の行動に繋がらなければ何の結果も現れないのです。ですから、そのような状態からできるだけ早く、より良い選択をして抜け出すことが重要になってきます。
そのためには本質に立ち返り、判断することです。
多くの問題は表面的な事柄に表面的に反応してしまうことから起きています。常に本質に立ち返って判断する癖をつけておくと日々起こる様々な問題を棒高跳びの様に頑張って越えて行かなくとも良くなります。始めは高いバーに見えた問題が簡単に飛び越えられるハードルの高さまで下りて来ます。


● 本質に立ち返り判断するステップ

1)【俯瞰する】
まず、迷いや対立は表面的なところにあることを認識します。表面的なものであり、本質に立ち返れば迷う必要もなく、対立するものでもなくなるという意識を持ちます。
そしてその迷いや対立を一歩引いて第三者の視点から俯瞰してみます。「もし、この迷いや悩みを友人から相談されたら自分はなんとこたえるだろうか?」という見方も有効です。

2)【掘り下げる】
「そもそも」と「なぜなぜ」を使う。「そもそも何を解決するために迷っているのか?」「何のためにこの対立は起きているんだろうか?」といった視点で本質を探ります。
気をつけなければならないのは、間違っても他の人の意見を「そもそもその考え方自体が・・・」などと言ってつぶしてしまったり、「なぜ?」の問いかけが「問い詰め」になってしまったりしてはいけません。

3)【俯瞰する】
視野は狭くなっていないか?をもう一度俯瞰してみる。本質を掘り下げようと一点にばかり集中していると回りに目が行かなくなることもあるでしょう。そんな時には「自分の視野は狭くなっていないか?大事なものが見えていないのではないか?」と自問してみましょう。

4)【決断する】
いつまでも探り続けても仕方がありません。長時間悩み続けたり、対立を続けていると時間のロスだけでなく、精神的な消耗も大きくなって来ます。悩んだり、対立したりするのも本質的にはより良い選択/決断をするためのものであるととらえ、迷ったり、対立したりすることに疲れるまえに決断をするべきです。
少なくともここまでの3ステップをふまえての決断は何も考えずに決めた決断よりも質の高いものになっているはずです。


本質に立ち返るものの見方は何度も違った状況で使っているうちに磨きがかかって来ます。最初は難しくとも、スポーツの様に繰り返すうちに上達して行くはずです。
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