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第19回『共同生活から学ぶコミュニティづくり(2)日常に根付くファシリテーション文化』

2015年12月17日

チームビルディングの話をしよう
※2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容お届けいたします。

※今回の『共同生活から学ぶコミュニティづくり(2)日常に根付くファシリテーション文化』は、
第18回『共同生活から学ぶコミュニティづくり(1)学寮アドバイザーという仕事に就くまで

の続きとなります。
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北澤泰子(以下 やすこ)

わたしはSCCでファシリテーションというものに出会いました。
チームビルディングジャパンさんにはSCC立ち上げの時から関わっていただいていましたので、前任の学寮アドバイザーからは「どんなことでもすみえさんたちを頼ってね」と引き継がれていました。
最初は何をどう頼っていいのかもわからなかったんですが、4月に一年生が入ったばかりの頃にワークショップをやっているのを拝見して、「こういうワークショップを企画して進行してする人がファシリテーターなんだな」というのが出会いでした。
それから学生たちが休みに入って、活動でモヤモヤしていることを発散できるようなことをしようということで、すみえさんたちと相談しながら、一緒にワークショップをつくっていきました。

河村甚(以下 じん)
せたすみえとやると事前準備がすごいよね。

やすこ
そうですね。ワークショップ本番はもちろんですが、事前の打ち合わせからすごいですね。
話し合う中で自然にわたしの思いや、求めるゴールを引き出して形にしてくださって。
一度プログラムをつくっても、またそれを組み替えたりといったプロセスも一緒に体験して「そうか、こういう風にやっていくのか」という技のようなものを、一緒にお仕事させていただいて感じました。
そして目的に合わせて、効果的な方法をを取り入れていくことで、SCCのチームビルディングにも一貫性が出てくるし、わたしの思いや寮生のニーズを形にして前に進みやすくなっていきました。
もちろんこれからもすみえさんたちにもファシリテーターとして寮に関わっていただくんですけど、わたし自身もファシリテーションマインドを持って普段から接することも大切だと思っています。SCCには私が着任する前からファシリテーションやチームビルディングの文化があったので、これを大切にしていくのがSCCだなと思って、ファシリテーションも勉強しています。

じん
なるほどね。そこに文化としてあった。

やすこ
はい、そうなんです。これは絶やしちゃいけないという思いもありますね。実際、寮生たちからも「この話し合いには、ファシリテーター置いた方がいいですね」とか「こういうワークショップどうですか?」とか、どんどん彼女たちも吸収していくので、すぐに自分たちのものにしていっているんだな、というのも感じますね。
寮生活は大変なこともある中、実生活から色々と学んでいくんですけれども、その中でもファシリテーションのことを学んだという事は寮生活の中でも活かせますし、卒業して社会に出てからも役に立つという思いがあります。特に大学生なので就職活動をして、社会に出ていくので、在寮している間に吸収できるものはいっぱい吸収していって欲しいと思っています。

じん
寮の中にそういうものがあるって素晴らしいよね。

やすこ
はい、そうなんです。ほかの方に話しても、「寮でファシリテーションが活きるんですね」と言われます。ファシリテーションというと企業などで活用されているイメージを持っている方も多いんですけれど、寮や学校生活の中でもふさわしいものだと思います。

じん
そうだよね。チームビルディングというか、コミュニティを育てていく場にファシリテーションは有効だと思うし、ちゃんとその現場で活かしていくというのはとてもいい事例だよね。

やすこ
いやー、そうですね。そう思います。
振り返ると私が前に勤めていた札幌の寮でも、中学高校時代を過ごした静岡の寮でも、ファシリテーションっていう言葉は使ってないけど、そういう要素はあったんだなっていうのが、後あとから見ると分かったという実感もありますね。

じん
そういう風に仕事の中でファシリテーションが活きている環境にいる立場として、やすこさんにとってファシリテーションって何ですか?

やすこ
うーん、そうだな。
コミュニティをつくっていくなかで、みんなのそれぞれの思いを引き出して、みんながすごしやすいようにしていくためのものでしょうか。
寮はやっぱり生活の場なので、すごしやすさっていうのは大事だなと思っていて、すごしやすくとか、楽しくとか、我慢しないですごせることを支援していくもの。
ワークショップとかじゃなくて、そういう心があるって事が大事だと思ってます。

じん
つまりそれが日常のいろんなところにあると。

やすこ
そうですね。それからチェックインとか、アイスブレイクとかそういうのもうまく組み合わせると、1年生で入ったばかりで不安に感じていても、緊張をほぐして素を出しやすい場をつくることができます。

じん
技として有効だと。

やすこ
結構2年生も新しい子たちを受け入れるって緊張するみたいなんですね。1・2年生のみが対象の寮であるSCCでは、2年生が上級生なんですね。彼らがハウス長だったり、委員長だったりといったリーダー的な存在なんです。
リーダーたちもファシリテーションを活用することでより早く、委員会やハウス等のチームを作ることが出来ていると思います。

じん
日常の中でのファシリテーション的あり方というか、考え方があるという話、とても興味があるなぁ。

やすこ
そうですね。何かをみんなで一緒にすることは大事だなと思っています。それは行事にしてもそうですし、ワークショップにしてもそうなんですけど、場を共有することって大事だなって。
寮で共同生活を送っているといっても、ただ住んでいるだけだと深く関わらないことも発生してしまうんですね。ただ決まった役割の責任だけ全うしていれば問題ないよね、みたいにになってしまうんです。
でも全体で集まる場を持つと、そこに参加することによって、一緒にその時間を過ごす事とか、そのあと一緒にご飯を作って食べたりもするんですけれども、それが話しやすい環境を作っています。そこで同じアニメの話で盛り上がったりだとか、同じ芸能人の話で盛り上がったりだとか。そういったことを糸口としてSCCを作ってるんだなって思います。寮生の帰属意識の醸成につながっていますね。

じん
なるほど

やすこ
あとは寮生活を送るときに自分の言うことだけを主張しても受け入れられないので、相手の話も聞くですとか。自分の言いたいことを我慢する寮生も多いので、やりたいこととか、嫌なこととか、変えてほしいこととかを発信することも必要だし、そういった伝えることと、聞くこと。それをお互いに持っていたらうまく行くんじゃないかなって思います。そのような場面が日常的にあるのでが、寮生活です。
じん
なるほど。一緒に生きていく上でファシリテーションがあることで、一緒に生きていきやすくなる。

やすこ
そうですね。「実はあのときこう思ってたんだよね」といったことを話せる振り返りの話し合いも大事です。「こういうこと思っていたのは、私だけじゃなかったんだな」とか。
寮は、多様性に出会う場、多様性に学ぶ場と言われています。同じ日本人でもそれぞれの家庭のルールに育ってきていますから。親元を離れて別のルールに出会ったときに、お互いを認め合わずにウチのが正しいみたいなことを言っていると寮生活は難しい。
「そういう考えもあるんだね」とか「ウチでは良かったけど、他ではチョットなあ」っていうようなことから、相手の考えを認め合うことの重要性に気づける場なんです。

じん
今度、チームビルディングのプログラムでカレー作りをやるんですが、なぜカレー作りをやるのかと言うとみんなカレーを作るとそれぞれ「自分のうちのカレー」というのがあって、野菜の切り方であったり、最初に何を炒めるとか「ウチ流のやり方」が出る。一緒に作ると「え?!お前それ先に入れちゃうの!」とか、「ニンジンの切り方が違う!」とかそういう違いを体験できるのが面白いから。
寮で一緒に作る機会とかどうなんだろう?

やすこ
SCCでもイベントのときなどに寮生が集まって一緒に食事をつくることがあります。「みんなこうだよね」って暗黙の了解があると思ってやっていると「あ、違うことするんだな」ということはありますね。
そういった時に自分とは違うやり方でも認め合えたり、失敗しちゃっても「大丈夫、大丈夫」ってフォローしあえたりだとか。そういう場面に自然に出会えるのが料理かな。

じん
生活の中に「お互いのあたりまえが違うんだ」みたいなのが実は色々あるよね。

やすこ
掃除もけっこうあります。大きいんですこれは。
人によって「きれい」の基準が違うので。「掃除したよ」って言っても「これは掃除したって言えないよね」っていう人もいるし。

じん
だよねー!

やすこ
そこは最近の大学生は言いたいことがあっても相手に伝えられずに我慢してしまう人もいるので・・・・・・。我慢は良くないです。

じん
なるほど、それはなぜ良くないと思う?

やすこ
我慢して当たり障りなく過ごすだけじゃつまんないと思うんですね。社会に出てきたらそれだけじゃダメな時も出てくるので、いかに相手を怒らせず、でも納得してもらえるように働きかけるっていうことも大事だと思うので。

じん
チームビルディングのやり方でもそういったところは大事。
違いを表面化させないと実は解決できないという事がある。もちろんそれをあえて放っておくというやり方もあるけれど、表面化して「実はこういう違いがあるんだね」ということを認識するだけで解決できてしまうこともある。
上辺だけで相手の「間違っているところ」を突っついてるだけじゃ解決しない。「なんでそれが違うと思ってるのか?」といったところをもう一歩踏み込んで行くとお互いに「何で相手がそれを当たり前だと思っているのか」だとか、「何でそこにこだわっているのか」だとかまで共有できて行く。そうすると違いが分かったというだけで問題解決の糸口につながって行く。

やすこ
そうですよね。
ルールばっかり作っていくより、ルールが無くても、思いやりで「相手のことを考えるとこうした方がいいよな」と考えられる方がいいですね。話し合いで表面化したお互いが本当に思っていることを共有して、お互いの思いやりでうまくいく。そんなコミュニティにしたいです。

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