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第60回『ミュージカルで社会づくり(3)拠りどころとなるコミュニティ』

2017年07月13日

チームビルディングの話をしよう
2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容をお届けいたします。

今回の『ミュージカルで社会づくり』は、NPOコモンビート理事長として
ミュージカルを通して人材育成をしていらっしゃる

安達 亮さんをお迎えしての対談です。

▽特定非営利活動法人コモンビート
 https://commonbeat.org/
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目次

 

 

コモンビートの社会的意義

安達 亮さん(写真左、以下 りょうちゃん)
自分たちのことって意外とわからなくなりますよね。
コモンビートって、実は社会でどういう役割を果たしてるのか
外から客観的に見たご意見を、よかったら聞かせてもらえませんか。

河村 甚(写真右、以下 じん)
それについては、昔から思っているところがあります。

まだ(ミュージカルが)日本語化してなかった頃
何度か公演を見に行きました。もう10年以上前になるね。

きっと今も引き続きそうだと思うんだけど、その頃から強く感じたのは、
社会の中の拠りどころの一つになっているということ。

つまり、コモンビートには価値観、哲学みたいなものがあって、
コモンビートに参加することによってその価値観に触れるような、
人が集まる拠りどころになっている。

日本の大きな弱点の一つは、宗教のような軸になるものが無いことだと思うんだよね。
拠りどころを持っていないことが日本の弱さの一つではないか、
特に若い世代にとって健全な拠りどころがあるといいな、と思っています。

コモンビートには比較的若い世代の人たちがたくさんいて、
自分の人生をどう生きていけばいいのか考える拠りどころになってる感じだよね。

社会の既成の価値観について考えたり、
例えば前回の対談でりょうちゃんが言っていたような、
普通に大学を出て、就職して・・・という人生でいいのかな…というようなことを
考えたりすることができる場なのかもしれないね。

自分がどう生きるのかということの自信をつかむきっかけになったり、
そういう仲間が出来る場。
社会の中の良い拠りどころとして存在している。

りょうちゃん
拠りどころという感覚というのは、最近自分の中にも芽生え始めています。

設立当時東京と大阪だけでやっていたのが、
まず愛知、さらに宮城と、福岡が加わって、
最近は鹿児島へ行ったり福井へ行ったり、いろんな地方都市でもやるようになって、
それこそ全国規模といっても過言じゃないくらいの規模になっています。

面白いのは、こうして14年間規模が拡大してきているにもかかわらず、
上演しているのはたった1作品だけだという点です。

じん
それもまたすごいよね。

りょうちゃん
その作品というのが、じんさんも参加されていたアメリカの教育NPOのUp with People が製作したミュージカル「A COMMON BEAT」です。コモンビートは作品を借りて、上演しています。

コモンビートのメンバーそれぞれが持っている拠りどころって、実はこのミュージカル作品なのではないかと思ってるんです。
演じたことがある経験と作品が、ある種の共通言語になっている。
全く知らない人でも、演じたことがある人同士は共通言語でつながることができる。
そういう強みを持っていると思いますね。

昔は100?150人ぐらいしかメンバーはいませんでしたから、お互いの顔を知っていました。
それが今は規模が拡大し、年間述べ約700人がプログラムに入ってきます。
そうすると、自分の参加しているプログラム以外の人はなかなか知り合うことができません。
ですが活動の中で初めて会った瞬間に、同じプログラムを受けて、同じ作品を演じて、同じ歌が歌えて・・・となったときの距離感、関係性というのは、
ぐんと近づくんですよね。

先ほど、じんさんがコモンビートのことを拠りどころとおっしゃってくださったことはすごく嬉しいですね。「コミュニティ」を生み出しているということですから。

社会の中でなかなかコミュニティに所属できないとか、
SNSなどのネットワークの世界の中に入ってしまうとか、
いろいろな意味で孤独になっている人たちがたくさんいると思います。

それが蓋を開いて、このようなリアルな場に入った瞬間に日本全国に広がっていくわけです。
国際交流も活動の一環に入れているので、世界につながっていくこともあります。

拠りどころとしての役割を元々果たそうとしていた訳ではなかったんですけど、
自然にだんだんとそうなってきたと感じています。

じん
元々活動の中に拠りどころとしての要素が内在していたのかもしれないね。

りょうちゃん
そうですね。

 

サードプレイスとしてのコモンビート

じん
最近は社会でもコミュニティの重要性が言われているようになったよね。
コミュニティ自体は昔からあるけれど、コミュニティのあり方や意味合い、人とのつながりが変わってきている。
その中で、コモンビートの持つ意味が表出してきたということかも知れないね。

さっきりょうちゃんが居場所づくりを大事にしていると言っていたけれど、
本当に居場所って必要だと思う。

メルマガ編集長のすみえさんがね、居場所とかサードプレイスをすごく大切にしていて、社会に広めていきたいと、よく話してるんだ。サードプレイスは注目されつつあるし、今後ますます重要になるものだと思う。

※サードプレイス・・・家庭でも職場・学校でもない第3の場によって、
人としてのあり方、生き方がファーストプレイス(家庭)やセカンドプレイス(職場・学校)にも影響していく。

りょうちゃん
婚活、終活など「○○活」ってありますよね。
地域コミュニティが失われつつあり、そういうものに自分から参加しないと、コミュニティに所属できないようになってきているという話を聞きました。

昔は婚活なんてしなくても、近所のおじさんがお見合いを持ってきてくれるとか地域コミュニティによって人のつながり、土地のつながりで結婚までたどり着けたわけです。

じん
確かに。

りょうちゃん
朝活も、昔はただみんなで朝集まって勉強していた。
今はそれが無いから、朝活という場を用意する。

自らそこに入っていかないとつながることができないコミュニティというのが
いっぱい出来始めています。

つまりは、放っておいてもコミュニティ感っていうのが昔はあったはずなのですが、
今はそれが全く無くなって、隣に住んでいる人を知らないという状態になってしまった。みんなSNSでつながっていて、人間関係に。
おせっかいな人もいなくなってしまった。
そうなると自分から動く必要がある。逆に自分から動けない人も存在するようになる。

じん
そうですよね。

りょうちゃん
となると、もはやコミュニティに所属できなくなる。

そういう時に、コモンビートに入ってくると、
さきほど話したような、ミュージカル作品によるコミュニティ感とか、ネットワーキングが進んで、居場所になる。
コモビ町内会になるという、ね(笑)

じん
たしかにね。本当にそう思う。

社会システムが発展してきたおかげで
“村”のコミュニティに依存しなくても生きていけるようになった。

その一方で、依存しなくてもよくなったことによって土地のコミュニティが薄まってきて、
自ら何も関わらなければ関わらずに終わってしまう。
誰もおせっかいしてくれないわけで、自分が選択しないとコミュニティに所属できない。
だからこそ今、コミュニティが自ら関わりを持とうというのが流行っているのかも知れないね。

りょうちゃん
ある意味、幼稚園から小学校から大学までは学校コミュニティに所属している訳じゃないですか。もちろん生まれた時から家族というコミュニティもあるわけで。
でも、そこからいきなり、就職活動で「社会に出なさい」「自立しなさい」と言われた瞬間に、会社にいれば、会社というコミュニティに所属することになりますけど、
例えばフリーランスやフリーターを選んだとすると、一気にコミュニティが無くなっちゃう。

じん
たしかにね?。

りょうちゃん
コミュニティに居る安心感で、別に何もしなくてもエスカレーターで上がっていけるんだよ、というところから、それが何も無くなって、自分が選ばなくちゃならないという世の中に放出された瞬間に、
選び方を教えてもらってないなぁ、と気づくわけです。
就活の時の自分はその一人だったと思うんですよ。

コモンビートは、ミュージカルとはまた違う側面で、教育的な考え方を持っています。

「自分らしく、たくましく」と言っているのですが、
自分を表現することで、相手がいろんな意見をくれて、
その中から自分の意見を選択して人生を生きていこうっていうメッセージを含んでいる部分があるんです。

ミュージカルを通じて表現できるようになって、自分の生き方って何だろう、と考えたときに、自分は「これだ!」、というものをちゃんと自分で選択できないと今はコミュニティにも入れないし、SNSでも孤独になっていくし…みたいなところへのちょっとしたアンチテーゼというか、そういう気持ちを自分は持っていたりしますね。

じん
いいね。そういう拠りどころとなる存在がある社会は、やっぱりいいね。

りょうちゃん
そういう意味では、コモンビートは学校みたいに、
人生に役立つことをみんなで教え合って、学び合って、みたいな感じなんですよね。
先生がいるわけではないんですけど、
いろんな人に出会えば、全員先生だ・・・という感じです。

じん
なるほどね。確かにね。
スキルとかノウハウとか、学びってそういうことだけじゃない。
いろんな人がいて違う価値観に触れたり、ぶつかったりすることはそれだけで学びになるよね。

りょうちゃん
コモンビートのミュージカルプログラムの中では、確実にぶつかりますからね。

じん
そうだよね?。

りょうちゃん
参加者の中には40代や50代の経営者の人もいますが、
踊れなければ20代の大学生から怒られるわけですよね。
年下から怒られるって、なかなかないじゃないですか。しかも、会社ではやることのない踊りについて言われるわけですからね。悔しいと思いますよ(笑)。
でも、そこに起こる対話って面白かったりしますね。お互いの肩書きを外した空間で、何かを作りあっていくことがいいんだろうな、って思います。

ぼくらが見きれてない、ミュージカル作りの良さというのがいっぱいある気がしています。
仕掛けなくても、普段の会話の中でもそういうことは勝手に行われていくので。

じん
良いコミュニティが生まれるようなプラットフォームになってるよね。
どんどん広がって成長してきているのは、意味があるからだよね。

りょうちゃん
やっぱり、求められているからこそ、活動は続いていると思いますし、
逆に、もう要らないとなったら、世の中良くなったんだろう、というところもありますね。
求められる以上はやっていくと思います。
自分のエゴで続けるいうやり方もあるとは思いますけど、
社会に求められていないと意味がないというのがNPOの考え方なのではと思います。

今の流れを考えると、コモンビートが社会で果たしている役割というのはそこそこあるのかな、と感じますね。

じん
すごくあるよね。

社会の中で求められなくなったら意味が無いというのは、NPOだけじゃなくて営利企業も一緒だと思う。
やっぱりチームビルディングジャパンが社会の中で求められる存在でありたいと思うし、求められなくなったら、無くてもいい。
社会の中でちゃんと存在意義を持っていなければ存在し続けられないと思う。
だから自分たちの存在意義がなんなのかを問い続けることが、営利企業も必要だと思う。

NPOの方が存在意義みたいなところはすごく濃いと思うんだけど、営利企業も同じ。
お金が回って、給料もらえて・・・みたいなところだけで動けちゃうからこそ、存在意義が重要だよね。

 

社会の中の拠りどころ

じん
ちょっと話が戻るけど、

さっき、コモンビートが社会の中で拠りどころであるというのが
すごく良いなと感じたんだよね。

それは、チームビルディングジャパンが拠りどころであったらいいなと
自分自身が思っているところがあるからだと思う。

誰しも働くときには、チームの中で、組織の中で働くことになる。
フリーランスだとしても、人との関係性がある。そうでなければ仕事って動かない。

そんな、組織の中で働く人たちの拠りどころでありたい、という思いが昔からある。

結構みんな悩みを抱えているじゃないですか。

りょうちゃん
抱えてますね。

じん
上司の愚痴を言ったりとか、「うちの会社って・・・」とかいうものあるし、
組織の中で働く人が幸せであること、
そして一人ひとりが自分らしく輝きながら、組織がその組織らしく成果を上げるという
チーム作り、社会作りをしていきたい。
それが自分たちの存在意義だと思う。

りょうちゃん
コモンビートにはサードプレイス的に会社員が来るわけですよ。

じん
そうだよね!

りょうちゃん
周りに同僚がいるわけじゃないので、愚痴を言いやすいんですよ(笑)。そっちでもいい発散になってるんじゃないかな、って思います。

そういう受け皿になっていればいいと思う一方で、結局コモンビートで愚痴を吐いて、また会社に戻ったら環境的には改善されていないということだったりするじゃないですか。それだとあまりいい役割を果たせているとは思えない。

それで、組織の中のチームビルディングをやっていくことが大切だと考えているんです。
コモンビートもチームビルディングジャパンも両方必要なんですよね。

組織向けも、個人向けも両方うまくぐるぐると回せれば、
組織も個人も健康になってハッピーなんじゃないかな、と思うんですよね。

じん
そうだよね。
うちの場合お客さんは企業なので、関われるのは働く場。
コモンビートはそこから離れたサードプレイス。

働く場からサードプレイス、サードプレイスから働く場(ま、家庭もあるけど)って
サイクルが回っていくといいよね。

りょうちゃん
それ、いい感じじゃないですか!

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