第75回『AIでは出せない答えを導き出す「対話」の手法』
2026年01月29日
チームビルディングにおいて、私たちはよく「対話が大事です」とお伝えしています。ただ、「対話って結局どういうことですか?」「話し合いと何が違うんですか?」そんな声をいただくことも少なくありません。確かに、対話という言葉は少しつかみにくく、ふわっとした印象を持たれがちです。
だからこそ今回は、なぜ今、対話が必要なのか、 対話とは何なのか、 会議やグループワークと何が違うのか。 できるだけわかりやすくお伝えしてみたいと思います。
正解を「知る」ことの価値は、もう下がっている
少し前までは、「正しい知識を持っていること」に大きな価値がありました。百科事典を持っていること。詳しい人に聞けること。それ自体が強みだった時代です。
でも今はどうでしょうか。わからないことがあれば検索すればいい。AIに聞けば、すぐにそれらしい答えが返ってきます。しかも、最新で、多様な視点を含んだ形で。
つまり、正解を知っていること自体の価値は、相対的に下がっている そんな時代に私たちは生きています。
それでも「答えが出ない問い」が増えている

一方で、検索しても答えが出ない問いは、どんどん増えています。
- 先の見えない未来に、どう向き合うのか
- 変化の激しい環境で、何を選び、何を捨てるのか
- 正解が一つではない中で、どう進むのか
こうした「道なき道」を進むとき、必要になるのが対話です。
ディベートと対話は、まったく別のものです
多様な意見がある場面で、よく引き合いに出されるのがディベートです。ディベートは、AかBかという二元論の中で、どちらがより正しいのかを競います。相手を説得すること。相手の意見を変えること。結論を一つに絞ること。これはこれで、有効な場面もあります。しかし、対話はまったく違います。対話は、AかBを決めるものではありません。AとBの間から、新しいCを生み出すためのプロセスです。
対話とは何か
私たちは、対話をこのように定義しています。対話とは、お互いの違いを尊重し合いながら、理解を共有し、共創を深めていくプロセスです。大切なのは、違いを無理に埋めることでも、合意に持っていくことでもありません。違いを違いのまま理解すること。 そして、その理解の上で、共に何かを生み出していくことです。
結論を急ぐと、消えてしまう声がある
組織の中の話し合いでは、こんな光景がよく見られます。
- 声の大きい人の意見が通りやすい
- 発言量の多い人に引っ張られる
- 立場が上の人に、無意識に合わせてしまう
- 慎重な人、優しい人ほど黙ってしまう
結論を急ぐほど、そうした声や感情は、場から消えていきます。
対話とは、その「消えてしまいがちなもの」が、きちんと場に出てくるためのプロセスでもあります。
心理的安全性は「目的」ではありません
対話を支える環境として、よく語られるのが心理的安全性です。
ただし、ここには大きな勘違いが起こりやすい。心理的安全性が重要なのは、それ自体がゴールだからではありません。心理的安全性があるからこそ、対話が起こる。だから重要なのです。
ハラスメントがない。否定しない。それだけで終わってしまうと、対話は生まれません。
「仲がいいチーム」でも、対話が起きない理由
「うちは仲がいいチームです」「役職関係なく、何でも言い合えます」そう語られるチームでも、よく見ていくと、実は心理的安全性が低いケースがあります。
- 相手が傷つかないことしか言わない
- 本音を飲み込んでいる
- 組織として大事な違和感が出てこない
一見、関係性は良さそうに見えても、個人が無意識にセーブしている状態では、対話は起こりません。
対話は、未来をつくるための技術
対話とは、自分の意見を通すことでも、相手を納得させることでもありません。違って当たり前という前提に立ち、一人ひとりの違いを尊重し、理解を共有し、そこから新しい知見や道を生み出していく。
検索しても答えの出ない課題に対して、チームで進むための「道」を照らすもの。それが、対話です。