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第74回『それは本当に「仕事だから当然」なのか── ベネズエラ侵攻に重なる、組織の直線思考』

2026年01月13日

年明け早々、アメリカによるベネズエラへの攻撃という、驚くようなニュースが飛び込んできました。他国に対して武力による現状変更を行うことへの国際法違反という批判もあれば、長年国民を苦しめてきた独裁者の排除を歓迎する声もあり、さまざまな立場や思惑が入り乱れています。

このニュースを聞いたとき、正直なところ、私は大きなショックを受けました。ベネズエラ国内で行われてきたことも、アメリカが今回行ったことも、どちらも力を持つ側が、自分たちの論理を「正しさ」として掲げ、相手を従わせようとする。その構図が、あまりにも露骨に現れていたからです。

そして、この構図は遠い世界の問題ではなく、私たちの身近な職場でも起こっているものでもあります。

理性的なはずの職場で、なぜ「暴力」が起きるのか

仕事の場は、本来「理性的な場」であるはずです。言葉で考え、対話し、合意をつくっていく場所です。それにもかかわらず、現実の職場では、怒鳴る、圧をかける、無視する、人格を否定する、立場の差を使って黙らせる。こうした行為はいまだに「指導」「厳しさ」「結果を出すため」と正当化されながら行われています。

このような「相手の尊厳・自由・安全を、相手の同意なく侵害する行為や力」は暴力です。身体的な暴力だけではなく、心理的・構造的な暴力も含まれます。

しかも厄介なのは、こうしたことが多くの「ちゃんとしている」とされる企業の中でも起きている、という現実です。

「自分は暴力をふるっていない」と思っている人ほど危ない

多くの場合、暴力をふるっている本人には、その自覚がありません。「どう考えても相手が悪い」「みんなのためを思って言っている」「これくらい普通だろう」

国家が「安全保障」や「正義」を掲げるのと同じように、企業の中でも、成果やスピード、正しさが、暴力を覆い隠してしまいます。その結果、組織の中では、人が萎縮し、会議では本音が出なくなり、考えることをやめてしまう人が増えていきます。

短期的には「統制が取れている」ように見えるかもしれません。しかし組織文化、組織の土壌は確実に内側から壊れていきます。

直線思考の行き着く先

「言うことをきかせれば進む」「強く引っ張れば変わる」こうした直線的な発想は、国家でも、企業でも、個人でも、すでに限界を迎えています。

不確実性が高まる時代に必要なのは、命令ではなく適応です。統制ではなく、関係性です。

ここで重要になるのが「有機的な組織」という考え方です。

有機的な組織は、暴力を必要としない

有機的な組織では、誰か一人が正解を握ることはありません。対話そのものが情報となり、違いは排除されるものではなく、資源として扱われます。力で方向を決めるのではなく、内側にあるものを循環させながら進んでいきます。

魚が水の中でこそ力を発揮できるように、人もまた、自分らしさを活かせる環境でこそ、自然に力を出せるのです。それを無視して、「陸を歩け」「泳げ」「飛べ」と命じること自体が、すでに人の尊厳や自由を奪う暴力なのだと思います。

「仕事だから当然でしょ」という思考

ここまで、分かりやすい例としてパワハラを挙げてきました。怒鳴る、威圧する、人格を否定する。それは誰が見ても「おかしい」と分かります。しかし問題の本質は、もっと静かで、もっと日常的で、もっと見えにくいところにあります。

「仕事なんだから我慢するのが当たり前」

「立場上、逆らえないよね」

「上が言うなら従うしかない」

こうしたものは、暴力的に聞こえない分、組織の中でとても強く機能します。仕事という関係性には、必ずパワーバランスがあります。役職、評価権、契約、雇用。ヒエラルキーが存在する以上、完全に対等な関係ではありません。

その力を使って、やらせる、黙らせる、飲み込ませる。これもまた、直線的思考です。

国家による他国への攻撃と、企業の中で起きている事

力を背景にした一方通行の決定。「俺たちが正しい」「従え」「従わないなら制裁だ」

企業の中で起きている、「仕事だから当然」「立場上仕方ない」「文句があるなら辞めればいい」

この構造は、驚くほど似ています。大きな力と小さな力。上から下への一方向。関係性ではなく、支配。それが国家であれ、組織であれ、同じ直線上にあるのです。

これから必要なのは「循環型」の関係

これからの組織に必要なのは、一方的に与え、命じ、消耗させる形ではありません。お互いに、与え、受け取り、影響し合い、循環していく関係性です。

上に立つ人も、指示を出す側も、成果を求める側も、「自分は何を受け取っているのか」「本質はどこにあるのか」を問い続ける。部下やメンバーも、「従う」だけの存在ではなく、関係の一部としてそこにいる。それは甘さではなく、有機的な強さです。

力で押せば、一時的には進んだように見えます。けれど、その先に待っているのは、疲弊、沈黙、分断です。

今、私たちが選ぶべきなのは、直線ではなく、生態系のような循環です。仕事という関係性の中で、人と人が与え合い、受け取り合い、共に進化していく。

その在り方に切り替えられるかどうかが、これからの組織の分かれ道となります。

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組織は変われる!チームづくり資料DL
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