LIBRARY

ライブラリー

第73回『【河村甚対談】人間らしい組織づくりを、これからも ── 有機的組織という選択』

2025年12月29日

2025年という一年──落ち着かない空気のなかで見えてきたもの

瀬田すみ恵(以下、すみえ)
今日は、2025年のチームビルディングジャパン(以下、TBJ)と、これからのことを一緒に話していけたらと思っています。
 読んでくださる方にも、私たちがどんな気持ちで仕事をしているのか、少し伝わると嬉しいです。
まず、じんさんにとって今年はどんな一年でしたか?

河村甚(以下、じん)
うーん、振り返ると「変化に向き合い続けた一年」だったなと思うんですよね。
僕ら自身が大事にしている『有機的組織』という在り方を、言葉だけじゃなく実際の行動として試される場面が本当に多かった。
そして、なんといってもTBJのオフサイト。あれは、組織としての節目の時間でした。

すみえ
8月に実施した1泊2日のオフサイトミーティングですね。
TBJは普段は完全にリモートで仕事をしていますよね。それでも充分に業務は回っているけれど、オンラインでやり取りをしていると「分かっているつもり」になっているところもある。
同じ空間に集まると、私たちってこんな表情で話すんだとか、こんなふうに沈黙を大事にしている人なんだとか、細かいところが一気に見えてくるんですよね。

オフサイトで考えた「チームビルディング」という言葉の意味

じん
そう。やっぱり組織づくりって、構造的な話以上に「人と人がどう在るか」が大きいじゃないですか。
そこで出てきたのが、「チームビルディングという言葉じゃないんじゃないか?」という問いで。
以前は、その言葉と私たちのやっていることがほぼイコールだった。でも最近はチームビルディングという言葉が普及してきて、一般的に使われるチームビルディングという言葉と、我々が提供している組織文化を進化させるようなチームビルディングの間の隙間が大きくなってきたように感じるんです。

すみえ
なるほど。ただ、だからこそ私はあえて「チームビルディング」という言葉を、もう一度手に取りたい気持ちもあって。

私は、チームビルディングという言葉は、まだまだ捨てなくていい言葉だと思っているんです。
というのも、今の仕事の現場を見ていると、プロジェクトのスタートラインにあたる「キックオフ支援」の価値が、これからすごく高くなる予感がしています。
短い期間で、一気にチームが立ち上がる瞬間ってありますよね。
あの瞬間を、専門性をもって丁寧につくっていく。
それができると、プロジェクトの空気がまったく変わるんです。
立場も経験も違う人たちが集まって、短期間で成果を出す。
それを自然にできるはずと考えるほうが、少し無理がありますよね。


でも、こういう「短期間での関係構築」を学んだ人って驚くほど少ない。
人と距離を縮めるのが得意な人もいれば、慎重に関わる人もいる。
そこに、文化や価値観の差も重なってくる。そうなると、
どうやって関係をつくるかのガイドが必要な時代なんですよね。
この領域は、TBJのコアの強みですし、私は引き続き大切にしていきたいと思っています。

社会の空気が変わるとき、組織のあり方も問われる

すみえ
2025年は政治のニュースも多かったですし、世界的にも落ち着かない空気が続いた年でした。でも、その不安だけじゃない、変化の芽のようなものも感じました。
じんさんは、社会全体の動きをどう見ていましたか?

じん
よく言われることではあるけれど、世界的にも、不確実性が高まっていると感じます。AIの質や使える範囲が1年で驚くほど広がり実用性が高まっているし、他にも様々な技術面での進化が進み、世界情勢も動き続けています。

でも、その中で問われているのは「変化し続ける環境に適応し、進化し続ける組織になれるか?」ということなんです。
台湾でオードリー・タン氏を中心に実践されてきているように不確実性を恐れるのではなく、不確実性を共同で扱う能力こそ社会の力になる。
彼女がCOVIDの時に示したように、トップダウンよりもネットワーク型の協働、透明性、そして迅速な対話。この組み合わせが、変化の速い社会で威力を発揮する。
この考え方は「有機的組織」を良く表しています。
誰かが正解を持っているのではなく、メンバー同士の対話や関係性で状況に適応していく。そのための透明性やオープンさをどう担保するか。

すみえ
うん、そうですよね。
結局のところ、
「変化に強い組織」って、
制度や仕組み以前に、
人と人のあいだに、健全な対話があるかどうかに尽きる気がしています。

対話があるから、不確実な状況でも立ち止まれるし、
対話があるから、揺れながらでも前に進める。
そこを丁寧に育てていくことが、
これからの組織づくりの土台なんでしょうね。

2026年、TBJが歩む「二つの道」

―― 名前のない価値 × チームビルディングという言葉
すみえ
2026年に向けて、TBJはますます新しいステージに入っていく気がしています。
じんさんの言うように、いまの私たちの活動は『チームビルディング』という言葉で説明しきれないほど広がっていますし。
2026年、TBJはどんな存在でありたいですか?

じん
「組織の正解を教える会社」ではなく、
「組織が自分たちで答えをつくれるように伴走する存在」
でありたいですね。
そのためには、
チームビルディングという言葉にとどまらず、
まだ名前のない価値を言語化していく必要がある。

すみえ
私はそこに、もう一つ加えたい気持ちがあって。
それは、
「言葉としてのチームビルディングを、もう一度育て直す」
そんな一年にできたらいいな、と思っているんです。

じん
なるほどね。
言葉を変えるんじゃなくて、育て直す感覚か。

すみえ
はい。
そしてもう一方で、じんさんが言った
「まだ名前のついていない価値」を、ちゃんと形にしていくこと。

この二つは、どちらも必要で、
どちらか一方だけだと、TBJの良さが削れてしまう気がしています。

言葉を捨てるのではなく、
意味を深くして、丁寧に使い続ける。
その両立ができたら、とてもTBJらしいな、と。

さいごに──変わる社会の中で、変わらず大切にしたいこと

すみえ
私は、組織づくりはやっぱり「人間らしい営み」だと思っています。
感情もあるし、違いもあるし、ときには誤解も生まれる。
だから大変なのだけれど、
だからこそ、丁寧に関わる価値があるのだと思うんです。

変化の激しい2026年を迎えるからこそ、
人と人が安心して力を発揮できる場づくりを、
これからも大切にしていきたいですね。

じん
本当に。
変化のスピードに飲まれるのではなく、進化のリズムを自分たちでつくっていけるように。
2026年は、そんな一年にしたいね。
もし今、組織の中で違和感を感じていたり、「このままでいいのかな」と立ち止まっているなら、それはとても健全なサイン。変化の入り口に立っている、ということだからね。

すみえ
はい。
2025年は、私たちにとっても揺れた一年でした。
でも、揺れたからこそ見えた景色があります。

2026年は、
チームビルディングへの思いを共にできる仲間とのつながりを、
あらためて育んでいく一年にしていきたいです。

組織を、チームを、人を信じて、関わり続ける。
それを、私たちはこれからも選びたいと思っています。

では、この続きはまた、
ゆるやかに話しながら、少しずつ形にしていけたら嬉しいですね。
今日はありがとうございました。

じん
こちらこそ、ありがとうございました。


オンラインでのご相談も
お気軽にどうぞ

チームビルディング研修・プログラムのご依頼やご相談など、お気軽にお問合わせください。

チームビルディング研修・プログラムの
ご依頼やご相談など、お気軽にお問合わせください。

組織は変われる!チームづくり資料DL
組織は変われる!チームづくり資料DL