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第7回『フラット型組織・ピラミッド型組織 理論編(後編)』

2019年05月02日

チームビルディング・バイブル

ここまでピラミッド型組織とフラット型組織についていろいろとお話してきました。

このコラムで語っているチームビルディングは、私たちが多くの企業で成果を上げてきたチームビルディングプログラムの実践的な知見と、何十年も前から研究され続けている組織開発の分野や、経営学・心理学などの分野の調査と研究の成果に基づいています。

ピラミッド型組織・フラット型組織に関連する理論や考え方を2回に分けてご紹介しています。今回は後編です。
(前編はこちら http://www.teambuildingjapan.com/column/b006.html )

 

■マズローの欲求段階説

フラット型組織、ピラミッド型組織の組織構造と人との関係性については、マズローの欲求段階説からも関連付けて考えることができます。

マズローがどこまで正しいのかという議論もされてきていますが、この考え方はすごく広まり、その後のいろんな研究にもつながっていることから見ても、一つのわかりやすい見方だと思います。

マズローの欲求段階説では、欲求は“低次欲求”と“高次欲求”の2つに分かれているといいます。
これは、ハーズバーグの二要因理論・・・“動機付け要因”と“衛生要因”の2つがある、ということとも重なります。

 

“低次欲求”は、人間が生きていく上で最低限必要なところ、ハーズバーグでいうところの“衛生要因”を満たすものを埋めていく欲求です。
つまり、満たされていないもの、不満を無くしていくという考え方です。

この、「不満を無くしていく」という考え方は、ピラミッド型組織の働く場と、そこに働く人間との関係の中に見ることができます。

典型的なピラミッド型組織では、働く人は、基本的に仕事が嫌なものだと思っていて、なるべく嫌な状態から脱したいと考えているという前提があります。このあたりはマズローでいう“低次欲求”、ハーズバーグでいう“衛生要因”と重なるところです。

逆に、フラット型組織とその働く人との関係はというと、マズローでいうところの“高次欲求”、ハーズバーグでいうところの“動機付け要因”というものが、
フラット型組織では満たされる環境になりやすいといえます。

ピラミッド型では、一人ひとりの人を活かす、個性を活かす、その人らしさを活かす、ということはあまり考えられていません。
いかに組織全体の有効なパーツに刈り揃えられているかということが重要だとされています。

一方、フラット型組織ではそうではありません。
いかに一人ひとりが持っている“らしさ”や強みが発揮できるか、それぞれが持っているいろんな良いものをいかにつなぎ合わせるか・・・ということがフラット型組織では大切です。

フラット型組織で働く人たちは、“衛生要因”を満たすためではなく、“動機付け要因”に基づいて働いていることを重要視します。

今現在の社会環境では、
エイミー・エドモンドソンの「プロセス知識スペクトル」でいうところの、“イノベーション業務”が増えています。

社会環境の変化、技術の進化・進歩のスピードが早く、10年前・・・いや、5年前、3年前の知識でも役に立たなくなっています。

数年前に当たり前だった知識、経験に基づいて判断していては、今日、勝ち抜いていくことはできません。日々すべての業務が、まさにイノベーションになりつつあります。

日本のような労働人口減少にある社会では、労働の効率化が進められています。より少ない人数で、より高い成果を出さなくてはならないからです。

技術の導入が図られ、人間のやらなくていいことは、どんどんやらなくていいように変化していきます。
逆の見方をすると、それは「人間がやるべき仕事」が研ぎ澄まされていくということでもあります。

ピラミッド型組織が得意とする業務は機械に差し替えがしやすく、フラット型組織が得意とする業務は人間がやるべき仕事の割合が高いといえます。

今後は、組織規模が大きく変化しにくいピラミッド型組織であっても、徐々にフラット型のテクニックや考え方を取り入れ、変化していくことが迫られるでしょう。

 

参考キーワード/文献

  • コンティンジェンシー理論 Contingency Theory
  • バーンズ&ストーカー 機械的組織 有機的組織 T. Burns, G. M. Stalker (1969) The Management of Innovation, Mechanistic and Organic Systems
  • エイミー・エドモンドソン チーミング チームが機能するとはどういうことか Amy Edmondson (2012) Teaming: How Organizations Learn, Innovate, And Compete In The Knowledge Economy
  • カネヴィンフレームワーク Cynefin Framework
  • アブラハム・マズロー 欲求段階説 Abraham Maslow (1943) A Theory of Human Motivation, Hierarchy of Needs
  • フレデリック・ハーズバーグ 動機づけ―衛生理論(二要因理論)Frederick Herzberg (1959) The Motivation to Work, Motivation-Hygiene Theory, Dual-factor theory
  • ダグラス・マクレガー X理論Y理論 企業の人間的側面 The Human Side of Enterprise

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