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第74回『アクティブリスニング』

2021年11月25日

今回は、聴き方・受け取り方を中心に、チームのコミュニケーションを改善していくアプローチを紹介します。

部下の相談に乗っているのに、明らかに相手に意識が向いていなかったり、話しかけられているのにパソコンのディスプレイに視線を向けて作業したまま「なに?」と話を聞いたり、相手がどう考えているのかを知ろうとせずに自分の話ばかりしたり・・・

これらは聴き方が上手でない上司にありがちなケースです。

聴き方にはテクニックがあります。
テクニックを学ばなくても自然にできている人もいますが、誰でもそうなれる訳ではありません。

できない人でもテクニックを知り、型通りにやってみるだけでもかなり効果があります。
今回は技をいろいろ紹介しますので、うまく使ってみてください。

「話を聴きましょう」というと、「しゃべらない」という選択になりがちです。部下の話しを聴かなくてはならない。では自分が黙ろう。それしか技がなく、「黙る」ということしかできないのです。
しかし、普段たくさん話している上司が突然しゃべらないで黙ってしまうと、それだけで部下を不安にさせてしまいます。
黙って話を聴くのは一番わかりやすい技ではありますが、他にも技がたくさんあるので覚えて使ってみてください。

また、大前提として、話を聴いているつもりでいる人も聴くことは意外と難しいということを知っておいてください。

人は「自分が正しい。相手が分かっていない」と思ってしまいがちです。
つまり、自分と相手にズレがあった場合、自分が正しく、相手が間違っていると考えてしまいます。
だから、自分に合わせさせようとしたり、この人は分かってないと諦めたりします。
自分の正しさにしがみついて、ズレを感じたときにうまく聴けなくなってしまうのです。

このような時には、「実は分かっていないのは自分だった」と捉え直すことが有効です。
当たり前は一つではありません。100人いたら100通りの当たり前があります。
それを認識することで、相手の当たり前を自分が分かっていないという捉え方に変えることができます。

相手が自分の当たり前を分かってくれないということもあるかもしれませんが、
相手の当たり前を自分も分かっていない、ということもまた事実です。
「相手は分かっていない」と感じたら、「分かっていないのは自分だ」と捉え直すことで、「聴くこと」を始めることができます。

ここで、聴く姿勢や心構えについて整理してみましょう。
これには3つのポイントがあります。

●相手のために聴く気持ち(共感的理解)
自分の言いたいことを言うのではなく、相手の立場に立って理解するために聴くことです。相手はどんな思いなのか、背景には何があるのだろうか、ということを好奇心を持って聴く。
これが相手のために聴く、共感的理解です。

●相手を受け入れる姿勢(無条件の肯定的配慮)
相手を条件抜きに受け入れる姿勢です。聞く側は条件抜きに相手を受け入れます。
相手が自分自身を受け入れていないときにも、聞き手が受け入れてくれることにより、本人も自分を受け入れられるようになります。
ただし、無条件に同意するということではありません。相手自身を受け入れるということです。

●ありのままでいること(自己一致)
内側にある自分と外側にある自分とが一致している状態を自己一致といいます。
誰しも外側にカッコつけて見せようとすることはありますが、ありのままでいること、偽りのない自分を見せることが大切です。
相手との関係性で上の立場に立とうとしたり、いいことを言って良く見せようとしたりするのは脇に置き、あるがままの自分でいることによって、相手が安心して話すことができる関係性をつくることができます。

以上、前提となる心構えをお伝えしました。
ここからはいよいよ具体的なテクニックをご紹介します。
言葉でできるテクニックと、言葉以外でできるテクニックがあります。

まずは言葉でできるテクニックです。

●相槌、頷き
相槌を返すことで相手はとても話しやすくなります。
非常に簡単でありながら、非常に有効です。
コミュニケーションの上手な人は、相槌や頷きをよく使っています。
「うんうん」「へぇ~、すごいですね」などたくさんバリエーションを使って相槌や頷きをしみてください。
簡単ですが一番効果があります。

●リピート(オウム返し)
相手の言ったことを、繰り返して言うということです。
例えば、「昨日は一日中家事をやっていて疲れちゃったんですよ」と部下に話されたら
「そうなんですか、一日中家事をやって疲れちゃったんですね」とそのまま返してあげるということです。
リピートして返されると相手も、自分のやっていることを俯瞰して捉えることができ、物事を判断しやすくなります。
また、リピートしてくれると、自分が言ったことを相手が聴いてくれていると感じられるので安心感につながり、話を続けやすくなります。

●要約を返す
言葉そのものを返すのではなく、語った内容からどう受け取ったか要約して返します。
「それってこういうことですよね」と伝えることにより、捉え方が違っていれば相手は修正することができるので、自分と相手の理解のギャップを埋めることにもつながります。
相手が3分くらい語ったものを5秒ぐらいに要約して返してあげると、相手はしっかり分かってもらえていると感じます。

●感情を返す
相手が感じていることに対して、「嬉しいですね」「それは辛かったですね」など
相手が感じている感情をそのまま返してあげます。
このとき、共感しなくても構いません。感情を返すだけで相手は自分の感情を理解してもらえたと感じます。

●オープンクエスチョン
オープンクエスチョン/クローズドクエスチョンという言葉は耳にしたことがあるかもしれません。
クローズドクエスチョンは、「はい」または「いいえ」で回答できる質問のこと、
オープンクエスチョンは、「はい」「いいえ」では回答できない、いろんな答えができる質問のことです。
「この案を良くするにはどうしたらいいかな」とオープンクエスチョンで尋ねることにより、はい/いいえで終わらずに、「こうしたらいいのでは」と会話を広げていくことができます。
逆に、相手が黙ってしまっている場合は、あえてクローズドクエスチョンを使って、はい/いいえで口を開かせることもテクニック的には有効です。

 

ここからは言葉以外でできるテクニックです。

●体勢、姿勢
相手に体を向けましょう。
のけぞっていたり、違う方を見ていたりすると、相手は話を聴いてもらえている感じがしません。
きちんと相手に対して姿勢を向け、目線を向けることで相手は聴いてもらえていると感じられます。

また、リラックスした自然な体勢でいると、相手もリラックスさせてあげることができます。
前のめりに聴くこともありますが、ずっと前のめりな姿勢だと相手が引いてしまいます。
前のめりな体勢は、ここぞというところで使いましょう。

●目線
相手の目を見ることで、自分のことを大切にしてくれていると感じられます。
ただし、ずっと見続けていると相手も疲れますので、適度に目線を合わせてください。

逆に、常に相手から目を逸らしているのは明らかな拒絶のサインです。
相手から話しかけられたくないとき、話を聞きたくないというメッセージを送るには、目線を逸らすことが有効ですが、話を聞こうとするときには相手から目を逸らし続けるのは良くありません。相手と目線を合わせましょう。

●表情
表情は言葉以上にモノを言います。
強張っていたり、イライラしている表情は相手を話しにくくさせます。
忙しいときに部下が相談にやってきたときにイライラした表情を見せてしまっては、相手は話しにくくなってしまいます。

逆に、相手の感情に同調した表情は聞いているサインです。
「嬉しかったんですね」と言葉で伝えるのも一つですが、言葉を発しなくても相手に伝わります。
自分も一緒に嬉しそうな表情をしたり、相手が悲しいときには、自分も悲しい表情をしたりすることは、言葉以上に有効です。

●体を同調させる(ミラーリング)
手の動きや姿勢などを、相手の体の動きに同調させます。
言葉の使い方もミラーリングすると相手に親しみをもってもらいやすくなります。
これは比較的簡単にでき、しかも有効です。

●沈黙
黙る、ということです。
お互いに黙ってしまうことに怖さを感じるかもしれませんが、沈黙自体には意味があります。例えば、相手は考えているようであれば、沈黙は相手に考えるための時間をとってあげていることになります。

コミュニケーションには間が必要です。
「間」ができると不安になって話し出してしまいがちですが、そこをぐっとこらえて「間」を大切にしてみましょう。

相手が黙っているときには、相手が言葉以外の表情や姿勢から発しているものを理解しようとすることが必要です。
起こっている沈黙の「間」の意味を相手の表情や姿勢から受け取ることによって「間」をうまく使えるようになります。
無理に「間」を埋めようとせず、相手をよく観察して「間」の意味を受け取ってください。

今回は聴く姿勢と具体的なテクニックを紹介してきました。
使ってみると、どんどん聴き方が上手になります。
最初は真似してみるだけでも結構です。
ぜひ今日お伝えしテクニックをうまく使って聴き上手になってください。

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