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第31回『コントロール出来ないものをコントロールしようとしない』

2012年08月02日

チームビルディング・ノート

組織を束ねる人は人をコントロールし、思い通りに操ろうとする事があります。しかし、本当は人をコントロールするのではなく、コントロールしなくとも良い状態を作ることの方が重要です。私たちは人が人をコントロールできるかのような錯覚をしています。だからコントロール出来ない時に苦しむのです。これは純粋にその事実や仕組みを理解しているかどうかによります。それを理解していれば苦しまず、コントロールしようとせずに活かすことができます。

例えば、あなたがボールを投げる時に、狙いを定めて思うところへ投げることができると思います。そしてあなたが技術を磨けば磨くほど、コントロールの精度は高まり、より正確に狙い通りの結果を出せるようになります。人をコントロールしようとする時に、このボールを投げる時のコントロールと同じように理解されがちです。コントロールする側が技術を磨けばより良くコントロールできるようになる。投げる位置と投げる方向、そして投げる力が分かればボールがどこにたどり着くのかも予測できるといった捉え方です。
古典力学的には確かにボールをコントロールすることができ、思い通りの結果を出す事ができます。しかし、人の心はより繊細でA地点から投げたボールが必ずしもすべての場合にB地点にたどり着くとは限りません。これは量子力学的捉えると理解しやすくなります。2重スリット実験という実験で電子が粒子であり、同時に波でもあるという不思議な事実を確認する実験があります。スタート地点から投げ出された1粒の電子が二つのスリットのどちらを通って壁のどの位置にぶつかるのかを予測することはできません。一粒の電子はそれが壁にぶつかった痕跡として観察されるまではどこに現れうるかの確率としてしか存在していません。そしてその確率は波の特性を示し、二つのスリットを通った電子は二つの波紋の発生源から生まれた波の様に干渉しあい、その着弾点の統計を取ると波状の縞を現します。

あなたの考えも、明確に言葉として観察されるまではどの辺りにあるかの確率としてしか存在できず、言葉となって始めて考えが確定します。そんなものをコントロールしようとしてもそれは不可能です。電子の粒が飛んで行く先はコントロールできず、どこにたどり着くかを言い当てることはできませんが、無秩序に見えるこの動きも実は波の特性を示していて干渉縞を描くという秩序を持っています。
人の心を古典力学的に捉えるとコントロール出来ない、扱い様のないものになってしまいますが、量子力学的に捉えると人の心も扱える様になります。

組織のリーダーはまず人の心や考えを自分の意思でコントロールできるという誤解を捨てる必要があります。そして人をコントロールするのではなくて、自由に動ける環境の中でそれがどう動くのかを観察することが重要です。そして2重スリット実験の様な干渉が起こる仕掛けを用意します。(ルール、制約や目標、問いかけ等)
確率的に良い結果が起こりやすいスリットを作り、波を作る事は出来るのです。

具体的に何をするのかと言うと
・コントロールの幻想を捨てる。
・しっかりと観察する。

それから波を干渉させるために
・明確なゴールの共有(時にはゴールの再設定も必要)
・ルールや制約の明示(時にはルールを変えることも必要)
・観察の結果、必要な事実を伝えたり、必要な問いかけをする

といったことを行います。

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