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第96回『チームビルディングは楽じゃない(4)チームビルディングを伝え広める』

2018年11月29日

チームビルディングの話をしよう
2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、
代表河村がチームビルディングを切り口に
さまざまなテーマでいろいろな人と話し合った様子をお届けしています。
 
◇今回の対談のお相手は・・・
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飯島 邦子 氏 (組織開発ファシリテーター プロセスデザインコンサルタント)

元IT系。システム構築プロジェクトのマネジメント経験で、やっぱり人だと気づいて方向転換。ファシリテーションと出会う。2011年独立、PROCESS Laboratory主宰。ファシリテーションを軸にNPO支援や中小企業の組織活性化や研修事業をしつつ、持続可能な開発のための教育(ESD)を推進するコーディネーター育成プロジェクトに関わる。2016年からは㈱ジョイワークスにも参画し、現在は、個人事業・企業活動・NPO活動という3つの器を通して、人と組織、そして社会の持続可能性の探求を軸に活動中。
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目次

 

 

飯島 邦子さん(写真、以下くに)
(前回の対談で)「経験や知識の差がある場合は、ピラミッド構造で教えることが効果的」ということだったけど・・・
トップに対して信頼関係ができていればたぶん受け取れるんだろうな・・・。
ピラミッドでそういうことが起こったときにちゃんと伝わるような
前の環境づくりが大事なんじゃないかなと思う。

多分私も、じんさんが言ったなら受け取れるんだけど・・・(笑)。
でもそうでない人が同じこと言っても受け取れるかなぁ?という懸念はあるかな。

河村 甚(以下じん)
環境づくりができているかどうかの影響は大きいよね。

メンバーがせっかく発言したときに、例えば
より経験のある人が「いや、経験上それは無いでしょ」って言ってしまったり、
ヒエラルキーのパワーを使って判断してしまったりすることがある。
そうすると、組織の中に良い種が埋まっているのに出てこなくなってしまう。

くに
あるある。梯子を外される感ね。

ピラミッド的に伝えたいことが伝わっていくって、
よっぽどその人を信頼していないと無理っぽい(笑)

その人が、そういう役割であるということを、チームの中で認知した上で
またその人の思いとか背景とかを、お互いが受け止めあえるような関係性ができていたときに、
今回はこれだよ、というのをヒエラルキーで伝えるとしたら
伝わるのかな(受け止められるのかな?)、と今の話を聞いていて思いました。

日頃の関係性、プラス、その人を信頼できているかどうか、というところなのかな?

じん
関係性は大事だね。

チームビルディングの要素の一つが「組織の土壌を作ること」。
組織の土壌作りには、
メンバーが主体的であること
多様性と受け入れ合い(ダイバーシティ&インクルージョン)
心理的安全性
の3つが必要。
くにが話していたことは、この「心理的安全性」につながると思う。

くに
うん、そう思います。
心理的安全性って、ただ受け止め合うだけじゃなくて、
ある意味ヒヤっとするくらいの”突っ込んだ”ところまで言っても大丈夫ってことだよね(笑)。

じん
うん。
心理的に安心な状態で、突っ込んで話し合える土壌があるかどうかということは、
組織作りがうまくいくかどうかに大きく影響する。

組織の土壌がどういう状態かについても、常に気をつけておく必要がある。
「うちの土壌、この辺で汚染が始まってるな」とかね。

くに
その汚染の変化に気づくことがチームビルディングのスタートかも。

 

正解を求める/答えは自分で見つける

じん
組織でフラット型のコミュニケーションが機能するためにも、心理的安全性は欠かせない。

誰も正解を知らない状況で最適解を見つけるには、フラット型のアプローチが一番近道。
遺伝していく中でより最適な遺伝子が残っていくように、フラット型なら、絶対的な正解ではなくその環境に一番適した解を見つけることができる。

くに
一発で正解にたどり着かないかもしれないし。最適解に近づいていくためには、試行錯誤しないとね。そのためにはフラットが大事ですね。

でも、どうしても正解を求める傾向ってある。
失敗を恐れたり、周りの顔色を窺って、「これはあってますか?」となってしまう人も多い気がする。

そういう人たちに対して、「答えは自分で見つけるんだよ」「自分で見つけていいんだよ」ということが、どうしたら広まっていくのかなぁ。

じん
そうだね~。難しいけど、まずは「答えは自分で見つける」ということをひとつの正解として理解することだと思うな。

くに
“正解”として教えるんですか?

じん
これまでずっと、「教えると学べない」と思ってたんだけど、少し考え方が変わってきたんだよね。
最近、チームビルディングの普及に本格的に取り組むようになったことも影響してると思う。

チームビルディングが世の中に広まる中で、「これがチームビルディングなの!?」というようなものが増えてきたことに対する危機感、っていうのかな、そういうのがあってね…。

くに
なんとなくわかるかも・・・これが伝わっていいの?っていう危機感でしょ?

私も、参加者が主体になっていない場に出くわすと「これがファシリテーションなの!?」って反応しちゃうことがある。

じん
うん、そうそう。

だから、正しいチームビルディングを広める必要性を感じてて、
そのためには”正解”を教えることも大切だと考えるようになったんだ。

くに
「正しいチームビルディング」か。

じん
チームビルディングジャパンは、10年以上毎日毎日全力で
組織がどうやったらうまくいくんだろうっていうことと向き合い、悩み苦しみながら考え抜いて、実践してきたから、
「こうやったら組織はうまくいく」というコツを知っている。

そして、そのちょっとしたコツを教えてあげるだけで、多くの組織ががらっと変わるのを目にしてきた。

これまで我々は、これらのコツを整理して伝えてくることはしなかった。
でも、コツを整理して伝えることができれば、もっとみんな簡単にできるようになる。

自分たちが見つけてきた、本当に意味のあるチームビルディングを世の中にもっと広めていくために、
「フラット型の組織づくりに必要なこと」をピラミッドの形で伝えていこうと考えています。

くに
なるほど。「フラット型をピラミッド型で」って、ある意味矛盾にきこえるけど、
ちゃんと“伝える“ことを大切にしたいんだね。

 

広まると薄まる?

くに
ところで夏に話した時、じんさん的には、「広めると薄まる」と思ってたんでしょ?

じん
うん。

くに
それは価値が下がる、当たり前になる・・・そう意味?

じん
そうそう。

くに
私も、チームビルディングが当たり前になるといいな、っていうところはすごく共感する。
ファシリテーションも当たり前にみんなができるようになっていったら世の中変わると思うから。
だから、実践者・探求者が増えないとなぁ・・って思ってるの。

じん
実践者、増やしたいよね。”ただ研修受けました”だとか、”こんな手法を知ってます”では何も社会に還元していないからね。

チームビルディングが当たり前になるくらい広めるためには、
今よりもっとわかりやすくシンプルにして伝えられるようにしていかないとだめだと思ってる。

くに
なんかパッケージみたいなものにして伝えるってこと?

じん
うん。広まっていくと、「濃度の差」があらわれる。濃度が濃い人もいれば、薄い人もいる。
すごく濃い/薄い人だけでなくて、中間濃度の人たちがたくさんいる。

最初から濃い濃度で広まっていけばいいけど、それは現実的に難しいから、
中間濃度の人をだんだん濃くしていきたいと思ってる。

くに
濃くなっていくって、つまり、だんだんちょっとずつでも実践に踏み出していく感じだよね?

じん
そう。実践は大前提だね。その実践を重ねていくことで理解が深まり、濃くなっていく。

 

「広まる」と「広める」

じん
中間濃度の人たちに対する働きかけのイメージは、俺の感覚としてはやっぱり、
自然と「広まる」っていうより、積極的に働きかけて「広める」って感じだなぁ。

自分にはチームビルディングが「当たり前になる」ために「広める」ということをやっていきたいという意志がある。

くに
なるほど、広める意志があるってことなんだね。うんうん。

じん
そして、チームビルディングの濃度を上げるためには、我々広める側がちゃんと伝えていく必要がある、と思ってる。

くに
「ちゃんと伝える」とは、伝える時の質もしっかり意識しながら伝えるってことだよね?

それが「ある種こうだという正解が伝わる必要がある」って言ってたことにつながってくるのかな。

じん
そうだね。

くに
チームビルディングが当たり前になることを目指すのことには至極同意なんだけど、
一方で、シンプルにパッケージ化されたものしか知らない人が増えることには一抹の不安も感じるの。

当たり前である状態のためには、チームビルディングが「自然に行われている」必要があると思っていて・・・。

パッケージ化されたプログラムしかやったことない人には、
「自然に」や「場に合わせて」ができなくなるんじゃないか、って懸念が
私にはあるんだろうなぁ。

 

広まり × 濃度

くに
なんかね・・・普及の度合い、広まり方を横軸だとするでしょ。
濃度が縦軸だとするでしょ。

この端っこは、シンプルに薄く広めた状態。
確かに人数、パイは少し増えるよね。

でもさ、これが普及した状態なのかな?って思ったりするんですよね・・・。
なんか、深みというか、全体の面積が広まっていく必要があるんじゃないかなぁ、ってね。

じんさんのさっきの濃度の話は、端っこ(薄いところ)にいる人たちが、だんだんと真ん中辺りに移動していく、というイメージなのかな。

じん
そうだね。
単にパッケージされたプログラムとしての「やること」を広めるだけでなく、大切な「考え方」や「あり方」を伝え広めていくことが重要だと思ってる。

まずは薄くても染まらないと、そこから濃くなりようがないから、
濃度が薄くてもとにかくチームビルディングに触れてもらって、
そこから回数を重ねる中で徐々に濃くしていけるといいな。

くに
そうね。わたしも最初はここから(薄いところから)入ってるしね。

じん
チームビルディングもファシリテーションも、最初は
「とにかく困ってるから勉強させてほしい」って感じで入っていくよね。

くに
そう。けれど、その薄いところにいつまでも居続けても何も変わらないなぁ、っていうのを痛感したの。現場で実践する自信もつかない(笑)。

2011年の震災でね、ファシリテーター仲間の人たちと復興支援に関わる機会があって。
それまでの、企業の中でファシリテーションとかチームビルディングでチームを変えていかなくちゃ、っていう視点から、災害復興の場でのファシリテーションというものを体験して、ファシリテーション観が変わりました。

そもそも「変えていかなきゃ」って、なんか上からだよねぇ(笑)

なんていうかな・・・今思うと当たり前のことだったんだけど、こっちが何かをしかけるというより、場にいる参加者が主体であり続けるためにどう働きかけるか、っていうことの大切さというか。。

そう思ったら、全然場を観る力が足りないわ~って気づいた。そこから色んなファシリテーターを観察して自分で試したり、でもって、失敗したり(笑)。とにかく現場に出る機会を増やさなくては、と思ったし、色んな人にフィードバックを求めたりもした。

なので、一時期はやらせてもらえるならどんな仕事でもやっていた時期もあった。まだ途上ですけど(笑)

じん
うんうん、当然。中間濃度の人たちが濃くなっていくには実践が大事だよ。
でないと“正解”を伝えた意味がない。

くに
ほんとに。受け取ってそのままじゃ意味がないね。

そうか、じんさんは、広める意志を持って、他動詞的に「広めて」いこうとしてるんだね。
私は私で、組織の中で自動詞的に「広まって」いくことの大切さを考えている・・。
でも目指すところは同じなんだよね。

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