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第62回『ミュージカルで社会づくり(5)受け入れ合いの力』

2017年08月10日

チームビルディングの話をしよう
2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容をお届けいたします。

今回の『ミュージカルで社会づくり』は、NPOコモンビート理事長として
ミュージカルを通して人材育成をしていらっしゃる

 

 

マジョリティもマイノリティもない

安達 亮さん(以下 りょう)
健常者が障がい者のことを、障がい者が健常者のことを、本当に理解するのは難しいことです。フラットなところで話ができる関係性をつくってから、例えば改善策を考えるようにしないと、どちらかがどちらかのためにやっている、という風になってしまう。そうではなく、みんながみんなのためにという意識をもって進めていくべきで、ダイバーシティ&インクリュージョンってそういうことなのではないかと思ってるんです。

人のために何かをやることはすごく重要なんですけど、そこに「お互いのためにやる」ということを取り付けられるといいと思います。

マジョリティ、マイノリティって、範囲を勝手に決めて分かりやすくしているだけですよね。出会った人に(目の前に現れた人に)マジョリティもマイノリティもない。

「どうしたらいいのか」と聞かれたら、「話し合えばいいだけ」。

河村 甚(写真、以下 じん)
相手と自分との関係性においては、マジョリティもマイノリティも無いからね。

りょう
そうなんです。だから、その人に合わせたインクリュージョンを起こせばいいと思っています。
「でもそれだと社会は変わらないよね」と言われることもありますが、
個人でもそれが出来ていないのは良くないですよね。
少しずつでも個人から始めたらよいのではないか、と僕は考えます。

わかりやすく障がい者っていう人が目の前にいたらそれができるっていうのもあるし、
別に障がい者が相手じゃなくても、目の前の人が困ってるなら助ければいい。同じことだと思うんです。あの人とは違うからいいや、というのではない世界観をもてるといいなと思います。

受け入れ合いが社会問題解決につながる

じん
本当に社会の一人ひとりがちゃんと受け入れ合いのようなことが起こるのであれば、
それ自体が結果的に社会問題の解決につながっていくと思う。

これが問題だよね、という課題を生み出して、
それに対して解決しなきゃ、というアプローチよりも、
一人ひとりの関係性というなかで
相手を受け入れ合うこと自体が解決につながっていくというアプローチもありだよね。

りょう
ありだと思いますね。
NPOって市民活動と位置付けられる部分があります。
市民一人ひとりが価値を見出していかないといけないな、と思います。

組織で進むことも大事だと思うんだけど、
まず個人のあり方をそれぞれが整えようと努力することがすごく大事。

自分にとっては違いを乗り越えていくための努力というのを、
コモンビートやブラインドサッカーというもので伝えたい。
パーソナルミッションである、
違いを楽しむこと、異なっているものってすごく面白いんだよ、ということを
社会全体が感じているという状態に少しでも近づけられるんじゃないかと思うんですよ。

じん
たしかに。

りょう
社会全体をチームだと捉えたら、死ぬほどいろんな人がいるわけです。
その違いを認め合えないのは悲惨だな、と思います。

「イエス・アンド」完全な受け入れ合い

じん
いろんな人がいることを認め合えない、というのに関連して
最近自分の中でホットなキーワードが「受け入れ合い」。
何が起こってもすべてを受け入れ合うことが大事だと感じています。

脱線なんだけど、
インプロを最近体験して印象に残ったのが、
インプロの人たちが大切にしている「イエス・アンド」という考え方。
出てきたもの、相手の存在そのものを、全部受け止めて、
そこから次へつないでいくということなんだよね。

即興で誰かが何かを演じたときに、
周りの人たちは基本的に全てそれを受け入れてから展開させないと、
脈略が無く全部台無しになってしまう。
だから出てきたものを全部受け入れて、
それが次につながっていくということを、みんなで支援し合うような
この完全な受け入れ合いってすごいなって感じたんだよね。
何も否定しない、完全な受け入れって、
日常になかなか無いと思うんだよね。

仕事で企業の会議にも入ることがあるんだけど、
いかに自分の立場をつくるかとか、
いかに自分の立場を犯されないようにするかとか、
受け入れ合いがないどころか、壁の作り合いが起こっていたり、
拒絶のようなことが、企業の会議では起こりやすかったりする。

そういうときにインプロに触れて、
完全な受け入れ合いってことが起こることがあるんだ、ということに
すごく感動したんだ。

意見・アイデアはすべて尊いものである

りょう
僕は、アイデアってとても尊いものだと思っているんですよ。
いろんな人の意見を、捨てられるわけがない、と思っている。
その瞬間に叶えることができなかったとしても、取っておけばいい。
ただのタイミングの問題と捉える。

インプロの考え方と一緒で、
その瞬間に自分が考えたものを表現した。それに対する尊さみたいなものがあるからこそ、アイデアは捨てない。そういうことなんです。

だから例えば会議の場で、新入社員が「何かアイデアはある?」と上司に聞かれたから発言したのに、その上司から「あー、わかるけどね、ちょっと実現不可能かな」と言われてしまうような状況。
社会に出ると実は、これがずーっと続くと思うんですよね
そうすると、自分の意見が採用されるという経験を持っていなかったり、
言っても基本捨てられちゃううんだ、という経験ばかりになったりする。

僕は「取っておけばいい」と思っていて、
あの人あの時にあの事言ったなぁみたいなのを覚えるようにしています。
その場では、「このプロジェクトには活かしきれなかったけど、その意見、どこかで活かしたいからとって置いていい?」みたいな感じで。
今はできない、ということはあっても、決して捨てない。
その人が自分の中から出したものを、性格的に僕はポイってできないんですよね。
すごく尊さを感じるというか・・・

じん
会議テクニック風には、「パーキングロット」だね。
本筋とは全然違うこと言ってるな、こいつ・・・みたいなときにも
パーキングに入れておくことで、
その人は受け入れられている感をもつ。

りょう
運営している人って、見当違いなことを言われると、その場では
無理だとか、ただの理想だよとか、まぁいろいろ言うと思うんですけど、
とりあえず全部とっておけばいいわけです。
それを例えば3年掛けてコツコツ実現していって、
3年後に、「君のあの時のアイデアががこうなったよ」と伝えてあげればそれでいいと思うんですよ。真っ向から否定する必要は全くない。

受け入れるっていう意味での「イエス・アンド」という姿勢は基本的に持っていると思いますね。

インプロの持つ可能性…「完全な受け入れ合い」がその人のあり方を変える

じん
危害を加えるものを拒絶するということも生きていく上では必要かもしれない。
けれどもどこかで「完全な受け入れ合い」みたいなものを感じられたり、そういうことがあるということを感覚として知っていたりすることが、
その人のあり方を変えるかもしれないと思う。

心が疲れてキャパシティが狭くなっているときは受け入れられなくても、
広くなっているときは受け入れられる、とかね。
そういうものがあると全然違うなぁ、と。

りょう
インプロもおもしろいですね

じん
いやぁ、おもしろいよ。
コモビもミュージカルをやっているし、なんか近い感じがするよね。

りょう
僕はインプロをやったことは無いけど、
ミュージカル以上に、インプロの方がより内面を出す感じがしますね。
素材が内側にしかないということですものね。

じん
そうそう、その通り、全部内側から出るものなので、
その役者さんの内面が表れるよね。

りょう
コモンビートはミュージカルしかなかったりする訳ですよね。
そういうところに、インプロっていうのを取り付けてもいい訳です。

インプロというものものもコモンビートにとっては表現活動の一つで、
自分を出していくことって大事だよね、っていうメッセージにつながると思います。
今のプログラムにはそういうのは無いんですよ。

だからインプロを教えている人たちと組んで、それで自分たちの表現に拍車がかかるなるならそれも良い手段だと思いますね。

じん
さっきりょうちゃんが言ってた、安心しないと表現できないということとつながると思う。
全部受け入れてもらえるんだ、となると、全部出しやすい。
つまり安心できる場が出来る。
どんなに訳のわからないことを即興で言ったとしても、
次の人が拾ってつなげてもらえると信じられると、
何でも出せるようになっていくだろうし、
感じ合いながら自分を表現することも出来るだろうし、
それがもしかしたら最後の大きなショーにつながっていくかもしれないしね。

りょう
そうですね。
だからうちは、ミュージカルでなくてもいいんですよ。
ミュージカルはただの手段なので。
インプロのような外の力もどんどん借りていきたいですね。

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