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第70回『コミュニケーションは「キャッチボール」ではない』

2021年09月30日

コミュニケーションはよくキャッチボールに例えられます。
ボールを投げて、受け取って、また投げ返して・・・という球のやりとりは確かにコミュニケーションと似ていますが、実は、コミュニケーションはキャッチボールではありません

コミュニケーションとは何なのか

まず、コミュニケーションとは何なのかから考えてみましょう。

辞書を引いてみると、「コミュニケーションとは感情や思考の伝達である」とあります。また「言語だけではなく、聴覚、視覚など様々なものを介して」とも書かれています。
つまり、意志が伝わる、感情や思考が伝達されることがコミュニケーションだということです。

ただし、コミュニケーションを捉えるときに大事なポイントがあります。それは、「コミュニケーション上手」というと、話す・伝えるなど、発信する側のイメージを抱きがちですが、それは一部であって全体ではないということです。
「コミュニケーションとは伝達である」通り、どちらかというと「何が伝わったのか?」「何を受け取ったのか?」がコミュニケーションの内容になるわけです

キャッチボールのように投げた球がそのまま相手に受け取られる訳ではなく、自分が相手に投げたと思ったものとは全く異なるものを相手が受け取る場合もあります。

言葉を誰かが投げて、受け取って、返して・・・ではなく、同時に様々なコミュニケーションを投げ合って、受け取り合っています。

言葉以外のコミュニケーションもたくさん起こっています。
例えば、話しながら相手の顔色を窺うなど、発信しながら同時に受信しています。

自分の頭の中に何か伝えたいものがあった場合、それをそのまま相手の頭の中に届けることはできません。
「言葉」というメディアを通じて発信することになりますが、。その時点で元々頭の中にあったものとは別のものになっていますし、発信した後にまたいろんなノイズが入ります。

また、相手も自分のフィルターを通して受け取っていますから、○○で表される言葉が自分と相手では別の意味であるということも起こります。自分が発信したものが相手に届くわけではありません。相手に届くものは、相手が受け取ったものであり、伝わった内容は、相手が受け取ったものが全てです。「こう言ったじゃないか」「こう伝えたじゃないか」は通用しません。相手が何を受け取ったかが、コミュニケーションで伝わった内容なのです

 

ファシリテーターはコミュニケーションをどう扱うのか

次に、コミュニケーションを扱うプロであるファシリテーターはコミュニケーションをどう扱っているのかを参考までにご紹介します。

話し合いの場を扱うファシリテーターは、コミュニケーションを「流れ」として見ています。

話し合いがどんな風に流れているか・・・例えば、うまく流れているか、滞っていないか、澱みはないかをみてうまく流れるようにします。

話していない人がいたら話ができるようにすることもありますが、それだけではありません。
話していないことに意味がある場合もあります。
話していない人の態度を他の人がどう感じるかを受信しやすいようにしてあげることもします。
これが「コミュニケーションの流れをつくる」ということです。

では、ファシリテーターはコミュニケーションの流れのどこを見ているのでしょうか。

特に人数が多い場合などは、話の内容そのものは聞いていないことも多いです。
話の内容よりも大事なのがあるからです。

一つはパラ言語、周辺言語と言われる音声情報です。
声の感じで相手がどのような気持ちなのかが伝わってきますよね。このような声の調子や高い低い、スピードなどのことをパラ言語、周辺言語といいます。
同じことを言っても、起こってそう、悲しそう・・・など、声の調子によって伝わることが変わります。

あとは表情や、身振り手振りもよく観ています。特に表情は重要です。いろんなメッセージを発信しています。

プロのファシリテーターは、話の内容よりも、声の調子や、表情、からだの動きなどから
コミュニケーションの流れを見て、流れに合わせて関わりかけるということをやっているということです。

大切なことは、話の内容を聞いていればコミュニケーションの流れを作れるわけではないということです。
話の内容よりもむしろ、どんな関係性があるのか、どんな表情や温度感で話しているのかを掴んで関わりかけることが大事です

とはいえ実際にやってみるのは難しいのですが、ファシリテーター達はこのようにコミュニケーションを扱っているということだけでも掴んでおいてもらえれば参考になると思います。

コミュニケーションは自分で変えられる

チームを良くしていきたいと考えたときに要になるのがコミュニケーションです。
企業等の組織では直属の上司と部下の関係性のコミュニケーションがチームビルディングに大きく影響します。
特に、上司が部下にどう関わるか、どのようなコミュニケーションを取るのかによってチームが変わってきます。

「コミュニケーション上手=話し上手」ではないということはすでにお話ししましたが、

部下が何を考えているのかをうまくキャッチして相手が話しやすくしたり、部下が言葉以外で伝えているメッセージをしっかり受け取ることができるとチームが明らかに変わってきます。
日常の小さなことからチームを変えていくきっかけになるので、このシリーズでも、今後具体的な方法を伝えていく予定です。

上司/部下のコミュニケーションが変わっていくことでチームが変わっていくということの他に、もう一つ、チームビルディングの観点でコミュニケーションの大事なポイントがあります。

それは、自分が日常のコミュニケーションをどうとるかは、自分自身で変えられるということです

組織開発に取り組もうとしたときに、「自分では何もできない」と思ってしまうことがあります。
実際、自分ではどうしようもないこともあるかもしれません。しかし、コミュニケーションは自分の行動で変えられます。
すぐに取り入れられる手法もたくさんありますのでこちらについてもシリーズの中でご紹介していきます。

「会社がしてくれないから」ではなく、自分が日常のコミュニケーションをどうとるかは、自分自身で変えられるのですから、取り組む価値があります。
誰かのせいにしないで、自分の行動が変わるだけでチームが変わっていくということを体験できるという点でも素晴らしいことです。

というわけで、今回はコミュニケーションの全体像をお話ししました。
これからコラム「リーダーのためにチームコミュニケーション」シリーズで、チームではどのようなことが起こっていて、リーダーはどのような行動がとれるのかという話をしていきます。

 

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