LIBRARY

ライブラリー

第69回『労働時間規制緩和!?これからの組織はどうあるべきか──いま求められる“有機的組織”とは』

2025年11月05日

新総理のもと、 労働時間規制の緩和 を検討が進んでいます。「働き方改革」後の関係法制見直しの一環として、心身の健康を守りつつ、働く人が選べる働き方を前提に規制を見直す方向が示されています。
このような動きは、働き方の自由度を高めると言いながら働く人たちの過剰労働につながらないか?といった懸念も言われ、丁寧に扱われるべき課題ですが、働き方の自由化、人材の流動化、価値観の多様化が進む現代において、まさに組織作り・チームビルディングの視点からも注目すべき出来事です。


働き方の自由度が変えた「会社と人」の関係

今の時代、転職市場も働き方も、自由度が格段に上がりました。コロナ禍を経てフルリモート勤務を希望する人も増え、「働く側が働き方を選べる」ケースが増えてきています。もちろんすべての会社に当てはまるわけではありませんが、雇用する側も人的資本経営の観点なども含め、働くひとたちをより丁寧に扱うように変化してきています。
かつては「会社の言うことが正しい」「会社に従うのが安定」でした。しかし今は、会社が一方的に人をコントロールできる時代ではなくなってきました。人はハラスメントや過重労働に対して声を上げ、より自分に合った働き方を選ぶことができるように変化してきています。(まだ変化できない会社もたくさんありますが)
この人材の流動化は、社会全体の変化がもたらした必然とも言えます。

60年前の理論が今に通じる「機械」と「有機」の発想

実はこのような変化は過去にもあり、当時の組織に関する理論がいまあらためて重要性を増しています。バーンズとストーカー(Burns & Stalker, 1961)が提唱した「機械的組織」と「有機的組織」という考え方です。
当時は、工場の効率化やエラー防止が重視され、「決まったことを間違えずに行う」仕組みが求められていました。バーンズとストーカーは、安定した環境ではそのやり方が有効だが、変化の速い環境では通用しないと指摘しました。
環境の不確実性が高まると、組織は「有機的」であること──つまり柔軟に、学びながら変化していくこと──が必要になるのです。

機械的組織と有機的組織の違い

機械的組織は、安定した環境に向いています。変化が少ない状況の中で、決められた手順を正確に実行し、確実に成果を上げることを重視します。
仕事の進め方はマニュアルに基づき、計画を立ててから行動するスタイルです。コミュニケーションは上意下達が中心で、同質性を保つ性質があります。成果は「正しい方法を守って続けること」によって生まれます。
一方の有機的組織は、不確実で変化の速い環境に強い組織です。未知の課題に挑戦しながら、行動の中で学び、進化していくことを前提としています。
コミュニケーションは上下関係にとらわれずフラットで、多様な意見や視点を活かしていくことを大切にします。成果は「行動し、試し、そこから学び取って変化していく」プロセスの中から生まれます。

「ルールを確認してから動く」では、もう追いつけない

いま私たちが生きている社会は、まさに有機的な変化の連続です。ESG、人的資本経営、生成AI、次世代エネルギー、量子コンピューター、──技術も価値観も、ルールが追いつかないほど変化しています。こうした中で、「ルールを確認してから動く」機械的組織のままでは、対応が遅れます。多様な人材を活かし、変化に合わせて進化できる組織、つまり有機的な組織が求められています。
しかし、有機的組織が常に良く、機械的組織が悪いというわけではありません。安定を支えるために必要な仕組みもあります。そういった場合でも社会の変化に適応していくためには有機的組織の要素を取り入れていくことが必要です。

有機的組織をつくる、シンプルな方法

有機的な組織に進化していくために、必要なのは大がかりな改革ではありません。日常の「当たり前」を少しずつ変えることです。それは「禁酒しましょう」「睡眠をとりましょう」といった生活習慣の見直しに似ています。
たとえば、コミュニケーション。有機的な組織では、相手の考え方や感情に耳を向けることを大切にします。言葉の内容だけでなく、その背景や気持ちにも目を向ける。「言葉の内容」だけではなく、「背景や感情を理解する」。そうすると、相手は「自分が尊重されている」と感じ、より率直に話せるようになります。背景を理解できないままだとA案かB案かといったより優れた選択をする方法しかありませんが、多様な視点を尊重し合い、混ぜ合わせて話し合うと、A案でもB案でもない「第3の案」が生まれます。
それは、生き物が進化するように、異なる遺伝子の組み合わせから新たな世代が生まれてくるようなプロセスです。これこそが、有機的組織の本質です。

スピードと有機性をどう両立させるか

現代の仕事では「スピード」も欠かせません。会議は30分、コミュニケーションはチャットで済ませる。そんな中で、背景や感情を大切にするのは難しく感じるかもしれません。
でも、だからこそ「誰でも、どんどん試してみる」ことが大切です。小さく始める。少しずつ変える。
組織は、そうした日常の小さな行動の積み重ねで、有機的に進化していくのです。

オンラインでのご相談も
お気軽にどうぞ

チームビルディング研修・プログラムのご依頼やご相談など、お気軽にお問合わせください。

チームビルディング研修・プログラムの
ご依頼やご相談など、お気軽にお問合わせください。

組織は変われる!チームづくり資料DL
組織は変われる!チームづくり資料DL