HOME 河村甚の連載コラム 第84回『コミュニケーションデザインの研究と実践(1)研究者から保育園運営へ』

第84回『コミュニケーションデザインの研究と実践(1)研究者から保育園運営へ』

2018/06/14

  
チームビルディングの話をしよう
2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った様子をお届けしています。
今回からは大塚裕子(ひろねー)さんをお招きして対談をお届けします。
 
大塚さんは現在、社会福祉法人喜慈会
子中保育園で副園長をされています。
http://konakahoikuen.com/
 
研究者の視点を持って保育園運営をされる大塚さん。
「コミュニケーションデザインの研究と実践」をテーマに、
これから複数回にわたってお話を伺っていきます。
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目次

 

河村 甚(写真右、以下じん)
大塚裕子(ひろねー)さんを対談にお迎えしています。

ひろねーは、北海道で大学教員としてご活躍後、
現在は厚木に戻り、実業家として保育園経営をされています。
うちも子どもが保育園にお世話になっているので、とても関心があります。

ビジネス、子どもたちとの関係、先生たちとのチームビルディング・・・
いろいろ面白い話があるだろうな~と思い、対談をお願いしました。

まずは自己紹介をお願いできますか。

大塚裕子さん(写真左、以下ひろねー)
大塚裕子です。よろしくお願いします。
現在は社会福祉法人喜慈会、認可保育園である子中保育園で副園長をしています。
http://konakahoikuen.com/

前職は大学教員でしたが、家庭的な事情や、親の高齢化による跡継ぎ問題があり、実家が運営している保育園に転職しました。

大学教員と保育所運営は仕事として全く違うものに感じられるかも知れませんが、学生と園児という年齢の違いはあっても、人の学びや育ちに携わるという点では、大きな違いはありません。

大学教員をしているときに「大学生になってから(育てるの)では遅い」と感じ、もっと小さい子どもの学びや育ちに関わりたいと思ったことも転職の動機としてありました。

あとはね、大学生と接する中で、この学生たちが比較的すぐに、親になるんだよな・・・と思ったら、ちょっと心配で(学生のみなさんゴメンね(笑))。
これからの保育園は親にも影響を与えなくてはならないと考えました。実際、最近では、厚労省の方針として、保護者支援も保育園の役割と位置づけられています。

そんなことがあって、わりと抵抗無く転職しました。

じん
なるほどね~。

 

大学教員時代

ひろねー
大学では何をしていたかというと、元々の専門は「自然言語処理」という分野の研究です。
最近注目されている人工知能(AI)において、今は人工知能自体が学習(ディープラーニング)することが話題になっていますが、20~30年前は人工知能が言葉を理解するための知識の設計や構築が重要でした。その設計に向けて、人の書いた文章の構造を明らかにし、人がどのようなコミュニケーションをしているのかを研究していました。

例えば、人の話し合い方、対話の仕方など、実際の対話のデータをもとに分析し、モデル化することにより、対話支援システムの構築につなげたり、言葉の分かるAIロボットの研究に結びつけたりできます。

じん
AI学会とか参加してたよね。

ひろねー
そう! じんさんにも収録にご協力いただいたベテランファシリテーターたちの会話データをもとに、「話し合うことのプロであるベテランファシリテーターたちは、どのように話し合いを進めているのか」という分析をAI学会の研究会で発表しました。

人のコミュニケーションから人工知能に関わる研究をすると共に、大学の中では学生の学びを支援する「メタ学習センター」に所属していました。メタ学習とは学び方を学ぶということです。メタ学習センターは、学び方の方法を研究し、学生に指導する組織です。

それまで私自身は、教育学にあまり接点がありませんでしたが、メタ学習センターで活動するうちに、学びの方法論や学びに対するモチベーションを科学的に研究することに、大きな関心を持つようになりました。

今は保育園で働いていますが、職場の保育士たちに、どうしたら自分たちの実践課題に気づいてもらえるだろう…と考えるときなどは、メタ学習センターで得たことがとても役に立っています。センターの同僚先生方は、教育心理学や教育工学が専門だったので、多くの刺激を受けました。

じん
うんうん。

 

研究員時代

ひろね~
大学教員になる前は、財団法人計量計画研究所に所属し、言語情報研究室というところで研究員をしていました。

研究所名だけ見ると、「はかり屋さん?」とか言われるんですけどね(笑)
実際には何をしていたかというと、初期は、機械翻訳のためにコンピューターが理解可能な辞書や文法の設計をしたり、音声認識の精度を良くするために言い淀みや言い直しの分析をしていました。

また、研究所は都市計画や交通計画、街づくりの調査研究事業も行っていましたので、
私の研究業務にも対人コミュニケーションの要素が加わってきました。

コミュニケーションデザインは、研究においても、大学での教育においても、今の保育の仕事においても、私が携わってきた仕事の核になっていると思います。

具体的には、コンピュータに理解させる言葉の研究、対人コミュニケーションの研究、学生にコミュニケーション力をつけるための授業設計、保育園での職員会議、保護者に子どもの様子を伝える方法など、すべてはコミュニケーションをデザインするという考え方でつながっていると感じます。

じん
おもしろいね~。全部つながってるね。

 

そして今、保育園運営へ

ひろねー
今、「こなかっこ通信」という保育園ブログを書いているのですが、
https://blogs.yahoo.co.jp/konaka_hoikuen

わたしにとってのブログは、研究を専門にしていたときの論文と同じなんです。発想して、観察・記録して、分析して、結果をまとめて成果を出すという場が保育園で働くようになってからなかなか作れないことを残念に思っていて・・・。

今、自分はこういうことについて考えている、こういう問題意識を持っているけれども、
みんなはどうなんだろう・・・ということをブログを通じて発信しています。

じん
へぇ~!
実践の中で研究している感じだね。

ひろねー
保育所運営や保育実践の中でも、できるだけ研究的視点を持つようにしていますね。

子どもの、あるいは保育士たちの、今の行動ってどういう意味があるんだろう、とか文脈から考えるとどうだろう、とかの考察は、日々実業でもしています。人の動き、考え、子どもの姿など、観察と分析を踏まえた上で、素晴らしさや問題点を評価します。必要があれば改善に向けて対策します。

じん
へぇ~! すごい。

ひろねー
実は、保育園に転職したばかりの頃は、研究と実業をつなげてはダメだと思い込んでいた時期もありました。いつまでも研究ベースで物事を考えるということは過去を引きずっているのと同じではないかとか、研究と実業を結びつけようとするのは現場に自分の価値観を押し付けていることになるのではないかとか考えてしまって……

しかし、転職後に参加した研修での講師との出会いから、むしろ結びつけていいんだ、今、保育所でもやるべきことって、これまで研究所や大学でやってきたことと同じだ、と思えるようになりました。

現場の課題を洗い出し、改善に向けて、分析する研究方法を「アクションリサーチ」というのですが、このアクションリサーチで重要なのが、実際に現場に入っての観察や、現場での事柄や人の行動の記録です。

観察や記録をもとに作ったデータを分析していくと、

「こういうやり取りがあると大抵、付随してトラブルが起こっているよね」とか
「この一言で、仕事の流れが変化しているね」

のように、現場で、何がどのような経緯で生じているかを把握し、何をどう変えれば現場が改善されるかということを考えていきます。

現場に入り、記録・観察し、分析して、現場の改善案を作成し、試行する。これがアクションリサーチの流れです。

私が言うと自画自賛になりますが、私たちの園の保育士たちは訓練を受けているわけではないのに研究的思考ができるんです。子どもたちの様子を見ながら、保育実践もアクションリサーチを行うようにやっているんですよ。それに気づいたとき、「うちの保育士さん、みんなレベル高い!」って思いましたね。

じん
具体的にはどういうこと?

ひろね
例えば、子どもたちが遊んでいる様子を見ながら、子どもの言動をよく観察し、「あ、子どもたちは今こういうことに関心をもってるんだ」と気づいたとします。その時、保育士は「みんなそういう遊びが好きなら、次はこれをやりましょう」と、子どもたちに直接指示するのではなくて、次に関心を持ちそうな展開を複数想定した上で、その展開に必要な道具や環境を準備しておき、選択肢として用意するんです。そして、子どもたち自身が自分の興味関心から遊びとして選んでいく。そのサイクルを保育の中で実践しているんです。

これはプチ自慢なんですけど(笑)、その取り組みをレポートにまとめたものが、食育コンテストで優秀賞が取れた実践です。
http://kids21.gr.jp/syokuiku/winner.php

私たちの園は、以前は安全を重視し、子どもや保育士にとって「危ないからダメ、できないからダメ」という制約や制限の多い保育をしていました。色々禁止にしてしまうのは簡単で、表面的には安全です。でも、それでは子どもの豊かな成長は望めません。子どもも保育士も保育園が楽しくない場所になってしまう。制約や制限はできるだけ無くして、好きなこと、大切に思うことをしていこう。みんなでそう決めてから、保育士たちが本来持っていた潜在能力を発揮して、どんどん飛躍しているという感じです(笑)

じん
すばらしいね! 園の方針によって、ほんとうに違うよね。




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