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第66回『D&I 今日からできるアクション 前編 』

2021年08月05日

前回は、ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための前提となる捉え方・あり方をご紹介しました。
今回から前編・後編に分け日常の中ですぐに取り入れることができる行動をご紹介します。

■「分からせようとする」を「分かろうとする」にする

相手に「分からせよう」としている自分を感じたら、相手を「分かろうとする」に差し替えましょう。
分からせようとしている自分の感情に気づくには、常に自分の気持ちを観察している必要があります。そのためにも、当事者としての自分と、それを俯瞰している自分の両方を持っておきましょう

当事者となっている自分を俯瞰してみると、相手に分からせようとしている自分が見えてきます。

何とか分からせようとしていることを自分自身で気づくのは難しいものです。しかし、俯瞰する自分を持つことによって、「相手に分からせようとしている自分」に気づくことができます。

衝突や対立が起こったときや、感情がコントロールを超えたときに、分からせようとする行動をとりがちです。
そのようなときは、一段上の俯瞰した自分で、自分自身を観察してみようとしてみてください。

俯瞰した自分を使って、「相手に分からせようとしてるな」ということに気づくことができたら、あとは「分かろうとする」にスイッチを切り替えましょう。

例えば、会議での話し合いで、Aさんがある提案をしたとします。Aさんはものすごくこだわっていて一歩も引きません。
Aさんに対し、「どうしてそこまでこだわるんだ」「そもそも破綻してる」「無理だろ」「いつまで経っても会議が進まないじゃないか」・・・と思ったときにはまず、「Aさんを分からせようとしている自分」に気づく必要があります。
そして、「なんでAさんはこの提案を一歩も引かないで押し通そうとするんだろう」ということを分かろうとしましょう。
するとあなたのAさんに対する質問が変わります。
「既存の現行案のどこが問題だと思っているの?」「この案の方が優れていると思っている一番大事なポイントってどこなの?」と、Aさんが何を考えてそのような行動をとっているのかを理解しようとする質問ができるようになるのです。

相手に「分からせよう」としている自分を感じたら、相手を「分かろうとする」ようにスイッチを切り替えましょう。
自分が相手の考えのどこが分かっていなかったのかが分かるだけで、解決策が見えてきます。

 

■違いを感じたときは好奇心を持って聴く

理解できない「違い」を感じたら、「違いを理解したい」という好奇心をもって聴きましょう。
そして、問い詰めたり、相手を否定するような問いではなく、 理解するための質問をします

理解できない違いはあるものです。理解できない違いを感じたら、違いを理解したいという好奇心をもって質問することが大切です。

とはいえ、対立や相手が間違っているという気持ちがあると、どういうことなのかと相手を問い詰めたり、論破し打ち負かそうとしがちです。

理解するための質問と、相手を問い詰める質問とは違います。

相手を追い詰めるのではなく、どうしてその考えに至ったのかを自分が分かっていないことを知りたいから聞いているという前提に立って、相手を理解するために好奇心をもって聞くようにしましょう。

 

■他者からのフィードバックを受ける

ジョハリの窓の「開放の窓(オープンな窓)」を広げていくためには、他者からフィードバックを受けることが重要です。

上司との面談の中ではフィードバックを受けることはあっても、日常的にフィードバックを受ける機会はなかなかありません。
小さくフィードバックを受ける機会を自らつくりましょう

例えば、プレゼン後やプロジェクトの終わりに、会話の中で気軽に「どうでしたか?」と聞いてみてください。

このとき大事なポイントは、純粋に理解したい気持ちで聞くことです。
周りから見たときにどう見えたのか、自分の見えてない部分を理解したいという気持ちでフィードバックを求めましょう。

良かった点だけでなく、自分自身について見えていない部分を意識して、積極的に聞いていきましょう。

 

■自己開示をする

フィードバックと同様、ジョハリの窓の「開放の窓(オープンな窓)」を広げるための一つが自己開示をすることです。

自己開示には恐れも伴います。恐れを抱いたまま、自分に害が及ぶほど自己開示をする必要はありません。無理のないちょっとストレッチした範囲で自分を開いてみましょう

とはいえ、意外と自分を見せてないものです。意識して自己開示していきましょう。
自分は隠しているつもりはなくても、他の人からは見えてないということもあります。
自分がなぜそう思うのかを背景を話したり、自分の持っている物事の見方を伝えていったりしましょう。

特に、テレワークで離れているとより見えにくくなります。
オンラインで必要なときにしかつながらない状況では、自分としては閉じているつもりはなくても、周りからは見えにくくなるものです。

仕事量が多いときは、いっぱいいっぱいであることを自ら伝えましょう。
状況を把握できると、周りの人にとっても一緒に仕事がしやすくなります。

例えば、Aさんが「テレワークになって事務仕事がスピードアップしました」と自己開示することによって、事務仕事が捗らなくて困っている人はAさんにヘルプを出せるようになります。

自己開示することによって、メンバー間でフォローし合えるチームになるのです。

 

■発言機会を平等にする

上司ばかり話してしまうのを止めにくいし、大勢の中では発言しにくいし・・・
発言機会を平等にするとはいっても、意外と難しいものです。

発言機会を平等にするためには具体的にどうすればいいのでしょうか。
簡単に取り入れることができる話し合い方のワザを一つご紹介しましょう。

それは、発言する前に、各自まず意見を紙に書くことです

書くより話した方がコミュニケーション取りやすい人がいる一方で、言うことを整理してからでないと発言できない人もいますし、周りの声を気にしてしまう人もいます。
そういう人にとっては、まず先に紙に書くことが効果的なのです

先に書いておくことで、声の大きい人の影響を受けずに、メンバー自身の考えを引き出すことができます。
また、全員が意見を書いて順番に出すことによって、特定の人だけが話し続ける状況にはなりにくくなります。

全員が先に書いたことを元に話し合うのはとても有効です。
特に、オンラインミーティングでは、議論の前に一旦個人で書く時間をとり、書いたものをもとに順番に話すと良いでしょう。

また、発言機会を平等にするためには、話の長い人や、他の人の話に被せて話し出す人を制止することも有効です。

一人で話し過ぎたり、他の人の話を奪い取ってしまったり・・・そういう特性を持った人たちというのは、ある一定数いるものです。そういう人たちをうまく制止することがキーになります。

ただ、そういう人たちは役職が上の人も多いので制止するのが難しいという現実もあるでしょう。
そういうときは、平等に発言できることが大事であることを事前にルールにしておきましょう

「話の長い人や、人の話を遮る人がいた場合は、お互いに指摘し合い、みんなが平等に発言できるようにしましょう」とその会議のルールとして事前に伝えておくのです。

会議のルールはテーブルの上や壁に貼っておいて話し合いを進めます。
事前に今日のルールを伝えておくことによって、ちょっと難しい遮る人もやりやすくなります。
上司に対して話し過ぎだなんて指摘できないな・・・という人は「今日のルールはこれです」というやり方を試してみてください。

発言していない人に意見を聞く ということも効果的です。
今、この場では発言の機会が平等になってないということに気づける人が多い会議はうまくいきます。
話の主流のところだけしか見ていないと白熱したときに、声の大きい人や押しの強い人の意見に流れてしまいます。
一歩引いて俯瞰して話し合いをよく観察をしましょう。

会議の場面だけでなく、日常の職場でも同様です。
意見を言わなかったり、何を考えてるのかわからない人に対しては、積極的に周りの人が意見を引き出してあげることによって、見えていないものが見えてきます。

(Bさんはずっと発言してない・・・)(ずっと下を向いてメモをとっている・・・)(なにか考えていることがあるのかな・・・)など気づき、発言を促しましょう。

発言機会を平等にすることは、組織づくりにとってとても大事です。

 

■4つのルールに則ってブレインストーミングをする

日常の会議で簡単にできる4つのルールがあります。

・制約にとらわれない自由な発想をする。
・とにかく量を出す。
・「それはダメ」とアイデアを切り捨てず、自然淘汰に任せる。
・便乗し、混ぜ合わせる。

単にたくさんのアイデアを出せば良いわけではありません。
混ぜ合わせるのがブレインストーミングでは一番大事なポイントです。

場の意見は個人のものではないという意識を持ちましょう。
いろんなアイデアが混ざり、最初に考えていなかったものが生まれることがブレインストーミングの肝です。

「ブレインストーミングをやりましょう、と言ってもできない」
「ブレインストーミングっていつやるの?」
「会議の性質としてブレインストーミングじゃないんですよね」
という声も聞きます。

答えがわかっていることにはブレインストーミングは向いていません。
誰かが正解を知っているなら、それを正しく伝える方が良いですから、ブレインストーミングをやろうよ、と投げ掛けてもうまくいかないでしょう。

ブレインストーミングは、答えのわからない状況で最適解を見つけ出すときに向いています

例えば、突然全社テレワークになって、どのように仕事を進めていくのか、業務効率化を進めるにはどうしたらいいか、誰も答えが分からない。このようなときにはブレインストーミングはとても向いています。

他にも、コロナの影響でホテルに誰もお客さんが来なくなってしまった。
ホテルということを活かして、コロナの環境のなかでホテルが儲けていくビジネスの方法はないかな、と考えるときなどにはブレインストーミングが適しています。

・これまでに誰も経験したことが無い
・誰かに聞けば正解がわかることではない
・誰も答えがわからない
ブレインストーミングはそのような状況下で最適解を見つけるためにものすごく優れた話し合い方です。
4つのルールに純粋に従ってやってみてください。

一番大事なポイントは混ぜるということです。
たくさんアイデアを出せばいいのではありません。
いろんなアイデアを出し、便乗し合って混ぜることで、見えなかった答えに近づいていきます。

通常の会議では整理された意見が求められがちですが、ブレインストーミングでは整理しないまま、全員の頭の中身をそのまま出し、他の人が出した中途半端な意見を、他の人が混ぜ合わせて紡ぎ出していきます。このことは、先の読めない環境下ではとても、とても大事です。

(後編に続く)

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