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第79回『「正解」ではなく「最適解」を見つけよう』

2022年02月03日

チームで話し合うのは「正解」を見つけるためではありません。
「最適解」を見つけるためです。

「正解」があるなら話し合う必要はありません。調べたり、正解を知っている人に聞いたりすればそれで済みます。
話し合いが必要になるのは、正解を誰も知らない場合です。

課題に対して最適だと考えられる答えのことを「最適解」と呼びます。
正解かどうかはわからないけれど、様々な要素を鑑みてこれが最適であろうというものを導き出すために話し合うのです。

話し合いは「正解」を探すためではなく、「最適解」を導き出すために行うものである、ということ。
これは、話し合いを大きく変える、前提となる重要な考え方です。詳しく説明していきましょう。

世の中には、大きく分けて「正解のある課題」と「正解が無い課題」の2種類があります。

●「正解のある課題」とは?
例えば「算数」は正解のある課題です。
算数は答えが必ず決まっています。すごく難しく見える数学でも正解があります。
「ロケットを月に送って地球に帰還させる」のも正解のある課題です。
非常に入り組んだ課題ではありますが、人類は月にロケットを送ったことがありますから、やり方を知ることができます。
一見難しそうに見えますが、これも正解のある課題となります。

●「正解のない課題」とは?
例えば、子育ては正解のない課題といえます。
子どもが最高の人生を送るために最高な子育て方法は何でしょうか。
いろいろな正解と思われることは語られていますが、唯一絶対の正解は誰も知りません。
だからこそ夫婦で相談しながら試行錯誤するわけです。
子育ては非常に複雑な、正解のない課題といえます。

正解のある課題は「算数」、
正解のない課題は「道徳」。

「既知の課題」は正解があり、
「未知の課題」は正解がない。

「単純な課題」「煩雑な課題」は正解があり、
「複雑な課題」には正解がない。

正解のある課題は、正解を知っている人に聞いたり学んだりすることで、正解を出すことができます。
正解のない課題は、多様な視点を掛け合わせて最適解を導き出すことが必要になります。

話し合いでは、正解を探すのではなく、最適解を見つけようというアプローチが必要であるということを覚えておきましょう。

「正しいことを言わなくてはならない」「自分が発言したことに責任を持たなくてはならない」「あとで突っ込まれないようにしなくてはならない」・・・このような心配から、自分の頭の中で整理をしてまとめてから意見を発言しがちです。
しかしこれは、最適解を導き出すための話し合いのときにはうまくいかない考え方になります。

自分の頭の中で整理してから意見を出すのではなくて、中途半端なアイデアをみなで出して、それを混ぜ合わせ、整理することによって最適解を見つけることが必要です。
つい整理してきれいにまとまった意見を言おうとしがちですが、まずはその姿勢から離れましょう。

最適解を導いていくためには、中途半端で多様な意見を混ぜ合わせることが必要です。
自分一人で答えを出そうとせず、みなでごちゃごちゃと話し合うことが最適解を導き出すためのアプローチとなります。

話し合いをするときに「不安」から話しにくさを感じる人が多いようです。
「不安」は話し合いを抑制します。

「意見に責任を持たなくてはいけない」「最初に発言するとその後も取り仕切らなくてはない」等、発言することによるリスクはあってもメリットがない場合に不安が生まれます。
誰も話し始めないために起こる「沈黙」が不安を生むこともあります。
発言することにリスクがあると沈黙してしまい、沈黙がさらに不安を生む・・・という負の渦を巻いている状態です。

自分は話し合いを仕切りたくない、目立ちたくないと思う人が多いようですが、仕切りたくないと思えば思うほど不安が増幅してますます話しにくくなります。
話し合いを仕切る進行役が必要であるという考えは捨てましょう。進行役やファシリテーターを決める必要はないのです。
友だちと雑談するような気持ちで気楽に話し始めてください。友だちと話すときに進行役など決めないはずです。

不安があると発言しにくくなりますから、不安はできるだけ取り除く必要があります。
この「話し合い方入門」シリーズを読んで話し合いの流れのつくり方や、流れの中での関わり方を知ることによって不安が減り、自由に話し合いに参加できるようになるでしょう。

複数の人が集まる話し合いの場で起こる不安には、「無知」「無能」「ネガティブ」「邪魔」の4つがあると言われています。

1)無知
無知だと思われたくないという不安があるために、例えば専門用語や略語、社内用語がわからなかったとしても尋ねずにわからないまま会議が進行してしまいます。

2)無能
能力がないと思われたくないという不安があるために、失敗を隠そうとしたり、自分を正当化しようとしたりします。

3)ネガティブ
ネガティブだと思われたくないという不安から、クリティカルな視点で物事をみた反対意見を出しにくかったり、「ちょっと待って」と言い出しにくかったりします。

4)邪魔
邪魔だと思われたくないから余計なことは言わないようにするということも非常によく起こっています。

これらの不安から生まれた行動が日常の話し合いを阻害しています。
不安があることを認知し、不安があるという前提で話し合いに臨むことにより、前に進むことができるでしょう。

これらの不安を解消するために効果的な「技」があります。
それは、話し合いを始める前に「グランドルール」を決めておくことです。
不安がある場合、グランドルールによって非常に話しやすく円滑に進むようになります。

グランドルールは場のオーナーやファシリテーターが「この話し合いの場はこのようなルールで進めていきましょう」と決めることが多いですが、参加メンバー全員で決めても構いません。

話し合いの場を促進するグランドルールの例には、以下のようなものがあります。
・誰か発言したらリアクションしよう
・お互いを受け入れ合おう
・失敗や間違いは大歓迎
・否定しない
・お互いに質問しよう
・みなでバランスよく話そう

3~5つのルールにまとめ、「この場では全員このルールを大切にしましょう」と示すことで、不安を乗り越えていくことができます。
安心して話す場をつくるためにグランドルールを決めましょう。

最後にまとめです。

  • 話し合いとは正解を探すためではなく、最適解を導き出すために行うものです。
  • 自分の頭で意見をまとめてから話し合いの場に出すのではなく、思い付いたことをまずは場に出しましょう。そして中途半端な意見をまとめてみなの意見にしましょう。
  • 話し合いの場における不安は発言を抑制してしまいます。なぜ不安を感じるのか、その背景にある理由を知ることで不安が和らぐかもしれません。
  • 誰が仕切るのかという不安を感じることも多いですが、仕切り役(ファシリテーター)は必要はありません。雑談のように話し始めましょう。
  • 話し合いの場では、「無知」「無能」「ネガティブ」「邪魔」の4種類の不安が起こります。
  • グランドルールを設定することにより、最適解を導き出すための行動で表す背中を後押ししましょう。

以上、今回は話し合いの前提となる考え方をご紹介しました。
次回は「話し合いの流れ」について解説します。

 

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