第65回『表面には見えない「組織の隠れ肥満」――心理的安全性の落とし穴』
2025年09月11日
健康診断でよく耳にする「隠れ肥満」。
見た目はスリムでも、実は内臓脂肪がたっぷりたまっている状態です。
本人も自覚がなく、周囲からも「健康そう」に見えるため、発見が遅れやすいのが特徴。
けれども、いざ数値を測定してみると深刻なリスクが潜んでいる――だからこそ危険なのです。
実は、組織にも同じような「隠れ肥満」があります。
それが 「見せかけの心理的安全性」 です。
見せかけの心理的安全性とは?
飲み会では盛り上がり、笑い声が絶えない。
会議でも冗談を言い合える。
上司にもツッコミを入れられる。

一見すると心理的安全性が高いように見えます。
「うちのチームは仲がいい」「上下関係もフラットだ」――そう思うリーダーも多いでしょう。
しかし、その雰囲気が本当に安心できる場を意味しているとは限りません。
笑顔の裏に、本音が抑え込まれていることがあるのです。
これこそが「見せかけの心理的安全性」。
組織にとっての「内臓脂肪」のようなもので、気づかぬうちに溜まり、やがて深刻な不調を引き起こします。
不調のサインを見逃していませんか?
生活習慣病が「自覚症状がないまま進行する病気」であるように、
見せかけの心理的安全性もまた、放置するとじわじわと組織をむしばみます。
以下のようなサインが出ていないか、チェックしてみてください。
- 会議で「大事だけれど場が白けそうな意見」が出にくい
- 冗談やいじりが、本気の対話を遮ってしまう
- 問題提起をする人が浮いてしまい、次第に口をつぐむ
- 話し合いは盛り上がるが、振り返ると中身が薄い
- 雰囲気はいいのに、組織の課題解決が前に進まない
ひとつでも当てはまるなら、要注意です。
「雰囲気が良い」というだけでは、本当の安全性は担保されません。
本当の心理的安全性とは
では、何が「本物の心理的安全性」なのでしょうか。
それは、単に仲が良いことや場が盛り上がることではありません。
むしろ、意見の違いや本音がきちんと出せることこそが心理的に安全な状態です。
そこには次のような姿勢が不可欠です。
- 相手に好奇心を持つこと
- 耳を傾け、最後まで聴くこと
- 違う考えを理解しようと努めること
この積み重ねによって、組織には「本当に言うべきことを語れる土壌」が育ちます。
心理的安全性とは「明るく盛り上がること」ではなく、**「深く語り合えること」**なのです。
組織の体質改善は日々の習慣から
人が生活習慣を見直して健康を守るように、組織もまた「対話の習慣」を整えることで体質改善ができます。
たとえば――
- 会議で必ず全員の意見を一度は引き出す
- 発言を冗談で流さず、最後まで受け止める
- 違う意見が出たときこそ「なぜ?」と好奇心を持つ
こうした小さな習慣の積み重ねが、やがて大きな違いを生みます。
まとめ
「見せかけの心理的安全性」は、組織にとっての「隠れ肥満」。
放置すれば、気づかぬうちに活力を奪っていきます。
大切なのは、雰囲気の良さに満足することではなく、
本当に言うべきことを語り合える文化を根づかせること。ぜひ一度、あなたの組織を“健康診断”してみてください。
その小さな一歩が、未来の大きな変化につながります。