第64回『ただの話し合いじゃない!組織を変える「対話」の力』
2025年08月23日
近年人材育成や組織づくり界隈では「心理的安全性」や「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、DEI)」、そして「人的資本経営」といった言葉が注目を集めています。特に上場企業には人的資本の情報開示が求められ、経営課題の最前線で語られるようになりました。
けれども、多くの企業が直面しているのは「では、具体的に何をどうしたら良いのか」という戸惑いです。
そこで欠かせないのが「対話」です。
「会議=対話」と思っていませんか?
「対話」と聞くと、多くの方が「まあ話し合ったり、意見を聞いたりすることね」とイメージされます。けれども、それは“会議”や“議論”の範疇にとどまっており、本当の意味での対話とは異なります。
議論は「結論を出すこと」を目的に進みますが、対話は「聴くこと」から始まります。ここにこそ、人的資本経営に直結する価値があるのです。
対話が生み出す「ナラティブ」

人的資本経営では、エンゲージメントや女性管理職比率といった数値指標が扱われます。しかし数字だけでは「本当に人を大切にしているのか」「組織がどう変わっているのか」を十分に伝えることはできません。
求められているのは“ナラティブ”、つまり物語として伝わるものにすることです。
ここで力を発揮するのが対話です。
対話の場で生まれる小さな気づきや率直な本音の言葉は、組織の変化を物語る証しとなります。
「メンバー同士の背景に持っている価値観も伝わってきて、信頼できるようになった」「仕事さえこなせば余計なことは言わない方がいいでしょと思って言わなかった意見を話せた」「経営層が社員の声を本当に聴くということを実践できるようになった」──こうしたエピソードは、人的資本を“生きた資産”として扱っていることを示す、かけがえのない材料になるのです。
対話が人的資本を育む
さらに、対話そのものが人的資本を育てる営みでもあります。
安心して意見を言える心理的安全性は、対話を通じて培われます。
多様なバックグラウンドを持つ人材の強みを引き出すのも、対話から始まります。
そして、先の見えない時代に進むべき方向を見いだすのも、対話を通じた集団的知性の力です。
「ふんふんと聞くだけ」で終わる会話のイメージにとどまってしまうのは、とてももったいないことです。
対話は、単なる“話し合い”ではなく、人的資本経営の中核を支える実践なのです。
数字に表れない人の思いやつながりを可視化し、物語として伝える。その積み重ねが、組織の信頼を高め、未来を切り拓く力となります。
これからの経営で本当に価値を発揮するのは、「効率的な会議」よりも、「未来を見いだす対話」となっていくでしょう。
チームビルディングジャパンでは対話を通じた人を活かす組織づくりサポートを行っています。導入についての個別相談は下記フォームよりお申し込みください。
https://system.teambuildingjapan.com/form/kobetsu_sodan01
皆様の組織づくりを応援しています。