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第13回『自分たちらしさ 理論編』

2019年07月25日

チームビルディング・バイブル

 

組織づくりと人づくりに必要な9つの要素
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 【 組織を一つにするもの 】
 ●自分たちらしさ
 ●目標、ビジョン、ゴール
  
 【 ベースとなる組織文化 】
  ●心理的安全性
  ●多様性と受け入れ合い
  ●主体性
 
 【 組織として学び、進化し続けるための行動 】 
  ●混ざり合いを起こす
  ●失敗や異色な発想を受け入れる
  ●行動量やコミュニケーション量を増やす
  ●リフレクションを行う
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――「組織を一つにするもの」には、2つの要素があります。一つは、真ん中にある軸である「自分たちらしさ」、もう一つは、自分たちの外側にあり、向かう先である「 目標 、ゴール、ビジョン」です。
今回は、組織を一つにするために必要な「自分たちらしさ」に関する理論や考え方をご紹介します。

 

 

■ハリネズミの概念

河村 甚(じん):「自分たちらしさ」といえば、まず
ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2(原題:Good to Great)』に出てくる「ハリネズミの概念」です。
第11回『自分たちらしさ』でも紹介しましたね)

「ハリネズミの概念」は、キツネとハリネズミの寓話からきています。

キツネは頭のいい生き物の象徴です。キツネは頭をつかって知恵をめぐらせ、毎回毎回異なる方法でハリネズミを捕まえようとします。

しかし、どんな方法でやっても、ハリネズミは丸くなってトゲを出すだけ。それを毎回繰り返します。

ハリネズミは、キツネほど賢くないけれど、毎回その丸くなってトゲを出すという戦略を取ることによって、絶対に負けることはないのです。

業界や時代を超えて生存する偉大な企業は、この「ハリネズミの概念」を戦略として持っていることが、ジム・コリンズらの調査によってわかりました。

――この「ハリネズミの概念」が「らしさ」なのですね。

 

じん:はい。ジム・コリンズは、3つの要素が重なる部分に「らしさ」があり、
その組織の「らしさ」を活かしたところに、最大の戦略があると言っています。

 

――3つの要素(問い)とは何ですか?

 

じん:1つ目は、「あなたたちが情熱を持って取り組めるものは何ですか?」
仕事だからと嫌々やるのではなく、やりたくて仕方のない事、夢中になれる仕事です。

2つ目は、「経済的原動力になるものは何ですか?」
やっても利益にならないのでは、企業ではビジネスが継続しません。
きちんと儲け、事業として成り立つ、ということです。

3つ目は、「世界一になれるものは何ですか?」
「世界一になるぞ!」という目標ではなく、自分たちの中に内在している、世界一になり得るものです。

①情熱を持って取り組めて、②ちゃんと利益をあげることができて、③世界で一番になれるもの。この3つの重なる部分に「ハリネズミの概念」があるとジム・コリンズは言っています。

よその会社がうまくいっているから真似するのではなく、「自分たちだからこれをやる」と真ん中にあるものをきちんと共有している企業がGreatな会社になっていくのです。

 

■USP(Unique Selling Proposition)

じん:次に、マーケティングの方から見てみましょう。
USP(Unique Selling Proposition)とは、他社と異なるユニークな自分たちのウリになるものというのは何か、ということです。

他とただ違えばいいのではなく、自分たちだからこその「らしさ」に基づいた提案が必要です。

USPがあることによって、マーケットに対する訴求力が生まれてきます。

戦略や事業方針が示す「らしさ」があることにより、真ん中の軸に立ち返ることができるというのが重要なポイントです。

多様性を活かして働いて機能していても、いろんな突飛な発想をしても、真ん中の軸からブレないことが大事です。

 

■AI(Appreciative Inquiry)

じん:最後に、組織開発手法の一つである、AI(Appreciative Inquiry)をご紹介します。

AIとは、ポジティブな面に注目して、組織の良いところを最大化していき、組織の未来を作っていくという思想に基づくやり方です。

ここでも「らしさ」にあたるものが重要視されており、AIでは「ポジティブコア」と呼ばれています。

ポジティブコアとは、
過去に経験した素晴らしい自分たちの組織の中のエピソードなどから、「自分たちの組織の真ん中にある良いところは何だろうか?」を探求し、見つけたもの・描いたものです。

 

――従来の組織づくりとは、どのような点に違いがあるのでしょうか。

 

じん:従来の組織づくりは、「自分たちの良くないところをいかに無くしていくか」というアプローチが主流でした。
「これが我々の組織課題である。この課題を解決するために○○という取り組みをしよう」という考え方です。

AIの組織づくりは、自分たちの真ん中にあるポジティブコアから、自分たちが実現していく未来を描いていきます。
「らしさ」を軸にした組織づくりの方法です。
近年、組織開発ではAIのような「らしさ」を活かしたアプローチが注目されています。

 

さいごに

じん:常に変化と向き合いながら、同時に「自分たちらしさ」というぶれない軸を持つことは、言葉で言うほど簡単ではありません。
同じ軸を握っているつもりでも人によって微妙にズレていることもあります。

それでも使い続け、行動し続けることでその軸は磨かれていきます。

「我々は何者であるか?」という問いは何度でも自分たち自身に問いかけてみる価値があります。

ダチョウは大きな羽で飛ぶことはありませんが、その二本の足でとても早く走ることが出来ます。
チーターは時速120Kmで走りますが、水の中に入ったら勝てません。

自分たちが何者であるかに目を向けず、ライオンが強いからライオンになろう、亀が長生きだから亀になろう・・・では何者にもなり得ません。

己を知ることが組織づくりの重要な鍵となるのです。

――ありがとうございました。
次回は、組織を一つにするために必要なもう一つの要素、
「目標、ゴール、ビジョン」の理論編です。

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