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第89回『心理的安全性を保つのは難しい』

2022年06月23日

不確実性の高い環境の中で成果を出すためにも、心理的安全性を高めたいと考える組織が増えてきています。

しかし、心理的安全性に関する研修を受けて知識を得たとしてもすぐに実現できるわけではありませんし、一旦心理的安全性を高めたとしても、その状態を保つのは実はかなり大変です。

なぜ心理的安全性の高い状態を保つのが難しいのでしょうか。

それは、心理的安全性は組織文化に根付いているからです。

日本に多いピラミッド型組織は、指揮系統を明確にして言われたことを間違いなく誰もができるようにするための組織構造です。
上司に逆らうことはしない、つまり心理的に安全とは言えない状態を保つことによって組織が回っていることが少なくありません。
例えば、「上司に逆らったら給料が減る」という環境では、上司が間違っていることがあったとしても異なる意見を言うことに躊躇するでしょう。

ピラミッド型の組織文化では、思ったことを何でも言い合える状態は起こり得ません。
なぜならピラミッド型の組織文化のなかで、これまで培ってきた知見をひっくり返し、皆が勝手な発言をし始めてしまったら、組織の秩序が混乱したり事故が起こったりするなど困る事態になってしまうからです。

ピラミッド型の組織構造において心理的安全性を保つのはかなり厳しいといえます。
しかし、組織構造はピラミッドだとしても、小さなチームから変えていかないと今の環境下では生き残れません。

元々組織に根付いたものというのはなかなか変わりません。ピラミッド型の組織構造の中で心理的安全性の高いチームをつくるには、地道に日々の小さな習慣を変えていくしかありません。

心理的安全性を高めようとするときによく行われる取り組みには2種類あります。

一つは「仲良くなろう」とする取り組みです。
例えば、懇親会や社内のチームビルディングイベントを行うことによって普段とは異なるコミュニケーションが生まれ、心理的な壁が低くなります。
仲良くなることは、心理的安全性を高めるうえでは効果的です。
しかし、ただ仲良くなれば心理的安全性が高まる訳ではありませんのでその点は注意が必要です。

もう一つの取り組みは「思ったことを言い合おう」というアプローチです。
心理的安全性が高い組織は思っていることを言い合います。
しかし、心理的安全性が低い状態、つまり安全が確保されていない状態で無理して思っていることをぶち込んでしまうと大事故が起こってしまいますので、こちらも注意が必要です。
例えば、上司が失敗したり間違いを起こしたりしたときに、元々心理的安全性が低いなかで、無理して指摘するとひどく怒られ、さらに心理的安全性が下がってしまうでしょう。

「とにかく仲良くなろう」「とにかく思っていることを言い合おう」という取り組みだけではうまくいかないどころか、むしろ逆効果になることもあるのです。
心理的安全性が高い場だからこそ思ったことを臆せず言える状態なのであって、思ったことを言い合っていれば心理的安全性が高くなるわけではありません。
安全ではない場で言い合うと、むしろ心理的安全性は低くなっていってしまいます。

では、どうしたらいいのでしょうか。

「仲良くなる」「思ったことを言い合う」取り組みをする前に、心理的安全性を高めるためにまずやるべきこと・・・それは 「パーパス」「ミッション」等、何のために我々は存在しているのかについての共有レベルを高めることから始めましょう。

心理的安全性が高いということは、単に関係性が良い状態を指すのではありません。
組織として明確なゴールがあり、それをチームで達成するために必要なことを臆せず言い合える状態であることがポイントです。

我々は何のために存在するのか、何を達成するチームなのかを共有することによって、皆が共通の目的のために我々は真剣に頑張っているんだと思えるようになり、どんな意見もお互いが受け入れ合えるようになります。

まず最初に、目的やゴールをチーム内でしっかりと共有することからスタートし、それから徐々に思っていることを言い合えるようにしていく。このステップで進めることがポイントです。

次回からは、心理的安全性の高い場を保つために排除すべき要因や、心理的に安全な場を壊してしまう要因についても解説していきます。

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