河村甚の連載コラム「チームづくりレシピ」

第100回 『チームビルディングはたった一人のあり方から始まる』

チームビルディングとは仲間が思いを一つにして、一つのゴールへ向かって進んで行ける組織づくりの事。その要はゴールの共有で、ゴールがなければチームは存在し得ません。しかし、どんなに高潔な目的/ゴールを共有し、前へ向かっているかに見えてもその背景にあるメンバーひとりひとりのあり方が伴っていないと、本当の意味でゴールを共有することができません。
結束してゴールへ向かうプロセスの中でメンバーのあり方は磨かれて行き、また逆にあり方を備えたメンバーによってチームは成長してゆきます。更に突き詰めて考えると、チームのすべてはたった一人のメンバーのあり方にすべて委ねられています。その一人とは他の誰でもないあなた自身です。あなた一人のあり方から全ては始まります。

誰もが知っているように、誰一人として他の人物に代わって感じたり考えたりすることはできません。他人はコントロールできませんが、あなたの感じ方、考え方はあなた次第で如何様にもなります。だから全てはあなたのあり方から始まるのです。他の誰でもありません。
もちろん、ゴールへ向かって前進していれば壁にぶつかったり、迷ったりした時に誰か他の人のせいにしたくなることもあると思います。そんな時に一時的に誰かに愚痴を言ったり、他人のせいにしたりすることもあるでしょう。それはあなたの弱さですが、弱さを常に隠し続ける必要はありません。自分の弱さを弱さであると認識したうえで、それを見せる強さも必要です。
そしてまた自分で責任を奪い返し、自分の周りすべてに影響を与える自分のあり方を整えます。

ではそれはどのようなあり方かと言うと
「Love & Respect」
と表現されるあり方です。
この中には色々な要素が含まれています。

・相手を受け入れる。
・自分のエゴを押し付けない。
・相手と自分は平等である。
・敬意をもって接する。
・自分の心を開く。
・自分の行動やあり方の源泉に目を向ける。
・相手の行動やあり方の源泉に目を向ける。

 等々・・・

とても中立的でこれ自体に何かの意味があるようには見えないかもしれません。しかし、これが非常に重要なのです。チームが本気で前に進む時にはチームの多様性を全て活かさなくてはなりません。そして多様性を活かすためにはまったく違った視点の意見のぶつかり合いや、人の意見や考えを差し置いても決断して前に進まなければならない場面が多々あります。
チームで乗り越えて行く荒波は過酷なものです。「Love & Respect」のあり方を手放さずに持ち続けていないと、この荒波に振り落とされてしまいます。言わばライフジャケットのようなものです。これがなければ一緒に船を漕ぐ仲間も次々に振り落とされ、誰も居ない船に一人残される事になるでしょう。

自分の周りのメンバーが「Love & Respect」のあり方を持っていなくとも嘆く必要はありません。あなたさえこのあり方を手放さずに育てて行けば、それは周りに伝播し、同じあり方の仲間が集まるはずです。
どんな荒波が来ても笑顔で乗り越えられるような「Love & Respect」をもって前に進んで行けるチームはたった一人のあり方から始まります。

第99回 『自分の意見を発信するという事』

「部下にもっと自分の意見、考えを発信してほしいと思っているのに、なかなか声が上がってこない」という悩みは良く聞きます。「もっと声が上がる場作りが必要だ」「発言しないのは考えを深めている途中かもしれないので無理に促さないほうがいい」などといった事が言われますが、もっと根本のところから理解することでより意味のある改善に繋げる事が出来ます。
まず始めに「なぜ自分は彼等に発信してほしいと思っているのか?」という問いから始めてみましょう。

「意見が出ないと会議が進まないから」「何を考えているのか分からないとどう対処していいのか分からないから」などなど、色々な理由があると思います。チームビルディングを深めて行くための視点から考えると、チームメンバーが意見や考えを発信するという事はその人の価値を発揮していると捉えられます。(もちろん発信していないからと言って価値を発揮していないわけではありませんが)
人の「意見」とは何でしょうか?それは単にそこにある事実を横流しする事ではなく、自分のフィルターを通して発信することです。例えば、そこにイスがあったとすると「イスがあります」ではほぼ事実の横流しで大きな付加価値は付いていません。しかし「とてもセンスのいいイスがあって、あれをうちのオフィスにも置いたら素敵なオフィスになりそうです」と伝えたり、「本屋さんにイスが置いてあって、立ち読みならぬ座り読みを促している仕組みは売上にどんな影響を与えるんだろうか?」と問いかけたりする事によって、その人のフィルターを通した価値が付きます。
事実の横流しではなく、自分のフィルターを通す事が付加価値を付ける事になるのです。

また、発信をする事で自分の捉え方を整理できる事も大きな価値です。発信をする為にはどう捉えているかを理解していなければなりません。しかし、多くの場合に言葉などで発信するまでは自分の捉え方も固定していないのです。自分の捉え方が確定された時に発信するということもありますが、発信しているうちに自分の捉え方が定まって来るという効果もあります。

しかし、意見や考えの発信が起こりにくい場もあります。誰も発言しない会議を経験した事があるでしょうか? 全員が待ちの姿勢で、口火を切りにくい状態です。発信しにくいと思うのにも色々な理由があり得ますが、良くあるのは発信する事で自分が否定される事を恐れるということです。事実の横流しは自分の意見がのっていないので否定されたとしても自分が否定された事にはならず、事実が否定されただけです。自分の意見をのせた発言は否定された時に自分が否定されたと捉えられ、恐いと感じてしまいます。
そこに集まるメンバー全員が横並びでいる事が暗に望まれている場では個性を発揮すると否定されるのではないかと恐くなります。他の人と違う意見を出すよりは誰かの意見に同調する方が安全だと感じるのです。
それから、意見を発信しても聞いてもらえない、圧倒的な指導者の考えを聞くまでは自分から発信する事は出来ないと感じてしまう場合もあります。
このような時には、自分のフィルターを通して発信することの意味を再確認する必要があります。

どんな人も一人一人固有の物事の捉え方を持っていて、それを通じて事実を表現して行くことがその人の価値を生み出す事になります。
「なぜ自分は彼等に発信してほしいと思っているのか?」という問いの答えをまず自分が知ることからチームも変わってゆきます。

第98回 『チームの目標と個人の目標』

チームには目標や目的が必要です。一緒に取り組む目標や目的が無ければチームにはなり得ません。そしてチームの目標について考える時に必ずあがるのが「チームの目標と個人の目標」の捉え方についてです。「個人を犠牲にしてチームの目標を目指すべきか?」という事は良く話題に上ります。
チームがチームとして機能する為には、チームの目標は欠かせませんが、同じ様に個人の目標や目的意識も欠く事が出来ないものなのです。これらの扱い方を理解することで、個人の目標とチームの目標を天秤にかけずに済む様になります。

チームとは、「仲間が思いを一つにして、一つのゴールへ向かって進んで行ける組織」の事。ゴールとしての目標(又は目的)は欠かす事が出来ません。しかし、この目標は「他人事」では上手く行かないのです。ここにかける一人一人のの思いが無ければチームのゴールとしては機能しません。
多くの会社が「お客様のため」を大事にしていますが、お客様の為に自分を犠牲にするのは間違っています。自分を犠牲にして、つらい思いで嫌々相手に接しているようでは結局相手も不快になり、お客様のためにもならなくなってしまいます。「お客様のため」を本気で考えれば、例えばお客様と一緒にいる事で自分が元気になり、その元気をお客様に返せるような良い循環が起こるような関係が必要です。どこかで誰かが苦しんで自分を犠牲にしていると、それがネガティブな循環を起こすきっかけとなってしまうのです。お客様の為が自分の為になり、自分の目標や喜びに繋がっている状態を作ることがより望ましい状態なのです。

チームが素晴らしい成果を上げるためには、無理矢理やらされている状態や、お金の為に仕方なくやっている状態ではダメです。そこに集まるメンバー全員の主体的な動機が必要不可欠です。そのためにはチームの全体目標をブレイクダウンして個人の目標に落として行くというアプローチでは上手く行きません。次の様なステップで、個人の思いをチームの目標に関連づけて行くという方法が有効です。


  1. まずチームにとって大事な事、その目的や目標をメンバー全員で共有する。
    チームの存在理由や目標は全員が理解を共有しておく必要があります。ここにブレや迷いがあると次のステップへ進めません。しかし、常に完璧なものを用意しようと思わない事も重要です。確固たるものが見えていないチームでも、それがまだぼんやりとしか見えていないという認識を共有して、前へ進んで行く事で少しずつ見えて来ます。
    常に完璧を目指しながらも、完璧には永遠にたどり着けない事を知って掘り下げて行くべきです。どこかで割り切って決める必要があります。


  2. チームの中での個人の思いや目標をあげる。
    その個人がなぜチームに参加しているのか?というところから探って行きます。この主体的動機がチームを動かす原動力となります。この思いが無いメンバーはそのチームに良い影響を与えません。しかし、多くの場合、きちんと掘り下げて理解する事で本人の主体的動機が見つかります。


  3. 個人の目標がどのようにチームの目的や目標にかなっているのか?を関連づけて説明する。
    これはその目標を掲げた個人が一人でする必要は無く、複数メンバーでその関連性を話し合うことも効果があります。ただし、個人考えを他のメンバーが決めつけてしまわないようにしましょう。


個人の主体的動機がチームの目標に関連づいて始めてチームが動き始めます。個人の主体的動機を原動力に、チームで掲げた目的地へ全員で向かって行けます。そしてそれがメンバー一人一人にとって「自分のため」にも素晴らしい成果を生み出し、ゴールへたどり着いた後に「またこのチームでやろう!」と思えるような結束も副産物として生まれて来るでしょう。

第97回 『自分が否定されていると感じた時に 』

組織で仕事をしていれば、その中で自分が否定されている様に感じる事があるかもしれません。居心地が悪くなり、「どうしてみんなは(相手は)自分の事を分かってくれないんだろう?」と、鬱憤もたまります。否定や疑念は上手く捉えきれないと組織の活動を妨げます。
仕事に限らず、どんな場面でもそうでしょう。こういった時に「分かってくれない回りが(相手が)悪い」と否定し返す気持ちになり、組織全体としてネガティブなスパイラルに陥ってしまいます。

しかしこのような場面で実は「回りから自分が否定されている」のではなく、「自分で自分自身を否定している」という事が多くあります。
すこし捉え方を見直す事で、他者を非難する事無く、自分も否定されずにより良い状態にして行く事が出来ます。

他者から理解されず、否定されていると感じた時に、まず、自分は他者を理解しているでしょうか?少し考えてみて下さい。「理解していない」又は「理解していないかもしれない」と感じている場合は、既に前向きな解決の第一歩を踏み出しています。「理解している」という時には、それが否定されていると感じ、苦しむ要因を生み出しています。
それはどういう事かと言うと、相手の考えもよく分かり、「それは確かに正しい。でも自分は違った理由で違う選択をしている。それを分かってほしい。」という時に苦しく感じるという事です。ここで気づくべきは他者は一切自分を否定していないという事です。ここであなたが理解している他者の考えはあなたの想像の産物です。もしそうだとすると、あなたは自分で自分自身を否定し、苦しめている事になります。

こういった事は、社会的に見て普通に考えたら自分の行動は理解されないであろうというときに起こります。電車に座っていて体の不自由な人に席を譲らない、困っている人を助けないなどというときです。あなたがその選択をする本当の理由は分かりません。しかし、社会的に見たら自分の行動や選択は理解されないであろうという思い込みが「自分は非難されている」という感覚を生み出します。そして、自分の選択を正当化するために真っ当な理由を作り、説得しようとするのです。

自分の行為の正当化は誰もが日常的に行っていて、それはつまり自分の行動に自分で意味付けをするというだけの事です。それ自体は悪い事ではありません。しかし、もしその意味付けがあなた自身を苦しめたり、回りの人を苦しめたりしているのであれば、それを変える力も、権利も全てあなたにあります。
もう一度その意味を捉え直し、意味付けや行動を選択しなおすことだけで自分の力ではどうしようもないかに見えた事が変わります。

第96回 『想定内に収めるよりも、想定外に立ち向かう知恵を持つ 』

何かの仕事に取り組む時に、事前に起こりうる事態を想定して準備をします。もしあなたが完璧な事前準備をしないと安心できないとしたら、それはチームにとって必要な視点であり、他のメンバーの見落としているものや甘く見ているものに気づく事が出来るでしょう。

しかし、完璧な事前準備を心がけたとしても本当に完璧な事前準備が可能なのは極めて単純なケースだけです。ほとんどの場合は想定できる結果だけでも事前に準備ができる以上にたくさんあり、さらに想定の範囲を超えた事も起こります。
事前準備以上に必要なのは準備していないことが起こった時に臨機応変に対応するトラブルシューティング力です。

まず、起こりうるトラブルと一言で言っても事前にどう備えるかの視点でみると以下のような種類に分けられます。
  • 事前に想定し、対策済みの事態。
  • 事前に想定したものの、対策を講じていない事態。
  • 事前に想定し得なかった事態。
経験豊富な人は、色々な事態が起こりうることを既に経験から知っていて、そのリスクの大きさも知っています。多くの事態を事前に想定する事ができ、対策を打つ事も出来ます。多くの事態を想定すればするほど、全ての準備をしておく事は出来ないので、リスクの小さな事などは敢えて許容し、全てを事前に避けようとはしません。小さなリスクにまで時間をかけて、心配して失うものの大きさも知っているからです。
経験が少ないと、何が起こるのか想像でしか分からない為、多くの場合に恐いと感じます。恐いと感じる事自体は自分を守る為に必要なことです。それを怖いと感じずに行動してしまう方が危険です。
恐いと感じたときに、起こりうる事態を想像できる限り想像して完璧に備えようとするのですが、経験した事の無い事であれば、それは非常に精度の低い準備になります。経験者のサポートがあれば、より良い事前準備ができます。

しかし、どのような事前準備をしようと、想定の範囲を超えたトラブルは起こります。もし全てが想定の範囲内でしか起こらないとしたら、あなたは新しいチャレンジをしていないということであり、成長もしていないという事です。全てが想定の範囲内だという時には危機感を持つべきでしょう。

この想定外の事態に立ち向かうのがトラブルシューティングです。トラブルシューティング自体も経験を重ねる事によってその精度を上げる事が出来ます。また、ひとつひとつ手順を踏んで考える事によりパニックせず、より良い結果に繋げる事が出来ます。

【トラブルシューティングの4ステップ】

  1. 状況を理解する。
    まず、何が起こっているのか?状況把握につとめます。多くの場合に想定外の事態が起こった時には状況が理解できず、想定から外れているというだけでパニックに陥ってしまいます。「今できること」に集中して取り組む為にはまず現状を把握する必要があります。しかし、ここにあまり時間をかけ過ぎては行動が遅くなってしまいます。出来るだけ短い時間で、時には数秒で状況を理解する必要があります。慌てふためくのをやめるだけでも十分な時間が確保できます。
  2. 対策の選択肢を考える。
    状況を理解するのとほぼ同時に対策を考えます。状況を整理すると「今、自分の行動で事態の改善に役立つ事」とそうでない事が見えて来ます。選択肢をリストアップして考える事は有効です。「どうしたらいいのか分からない」という時には選択肢が曖昧であることがほとんどです。選択肢を明確にすることで「この3つの選択肢の中から選べばいいのか」と理解できる様になります。
  3. 選択肢を比較し、決断する。
    トラブルシューティングで一番大事なステップは決断のステップです。ここまでのステップはあくまで最適な決断をするための準備であって、時間をかけ過ぎてはいけません。
決断はロジカルな判断だけでなく、直感で判断しなければならない部分が多くあります。どんな決断をしても、そのとき決断した事が全てです。迷う事に時間をかけすぎるよりは決断をして、行動に時間を割くべきでしょう。
  4. 行動する。
    決断をしたら全力で行動します。行動していると事態が変化して来ます。行動するまでは自分の力で事態を変える事は出来ません。そして事態が変化したらまた最初のステップに戻り、その新たな事態に対応して行きます。
チームで取り組む場合には、上記の「状況把握」、「選択肢抽出」、「行動」のステップはチームの総力をもって、適材適所で取り組みます。ただし、多くの場合に要である「決断」のステップはチームのリーダーが背負うことになります。逆の視点から見ると、チームリーダーが「決断」以外のステップまですべて自分でやろうとしてしまうとチームは機能しません。「状況把握」、「選択肢抽出」、「行動」のステップでそれぞれの力を主体的に発揮できることが重要です。

チームでも個人でも、この4段階のフレームを知っていれば、何を心配しなければならないのか、そして何は心配しなくてもいいのかを理解でき、想定外の事態に対してより対策を講じやすくなります。トラブルに直面したときは、まずはパニックに陥らず、順にステップを踏んで行くことで解決に一歩ずつ近づいて行けます。
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