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第35回『登山ガイドとチームビルディング(7)本当に強いチームって?』

2016年07月28日

チームビルディングの話をしよう
※2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容をお届けいたします。

※今回の『登山ガイドとチームビルディング(7)本当に強いチームって?』は、
第29回『登山ガイドとチームビルディング(1)背景
第30回『登山ガイドとチームビルディング(2)なぜチームビルディングを始めたのか?
第31回『登山ガイドとチームビルディング(3)経験から学ぶ
第32回『登山ガイドとチームビルディング(4)人と関わり合う力
第33回『登山ガイドとチームビルディング(5)関わり合いと社会づくり
第34回『登山ガイドとチームビルディング(6)なぜ山に登るのか?
の続きとなります。

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河野格(以下いたる)
山登りで一番怖いのは、自分がどこを目指しているのかがわからなくなったときですよね。目指すものを見失ってしまったときや思わず見失っちゃったときは、非常に怖いですね。

河村甚(以下じん)
その怖い感覚を持てないと、ダメだよね。怖いとすら感じずに、いま動かしている足を止められないというのは……。

いたる
一番まずいですよね。

じん
まず止まんなきゃみたいな感覚に至らないという。怖い感覚を持つのって大事だよね。

いたる
怖い体験をしているというのは、山に登るとすごく強いので。強いっていうのは、リカバリー能力がすごいんですよ。戻ってくる力とか、辞退する力とか。やり遂げるというよりも見失った自分をもう一度見直して最初からやろうとか。そういったリカバリー能力が体感できるので。ここで僕たちがいま大事にするのは何って? 自分たちの現在地を把握して、目指す先のどこにいて、「あ!ずれてんだな」と自分たちが自覚することが大事ですよね。それで、そこから下りる・下りない、修正する・しないを選ぶ。

山登りの道迷いにも2つあって、自覚していないケースと、自覚しても強引に修正しようとするケースが多い。自覚して戻る人って結構少ないんですよ。だって、自分が来た道を戻るのって嫌じゃないですか。ただし、戻った方が早いんですよ、結果としては(笑) 無理しちゃうんです。山登りの場合は、生死に直結するのであれですけど……、うーん、なんか似てますよね。

じん
かなり似てるね。

いたる
修正するなら、歪みが生じるんですよ。身体的に無理が生じるか、時間的に無理が生じるか、あとは気持ち的に無理が生じるか。どこか一度修正をしないと、ドツボにはまってしまう……。だから、山登りではできるだけ早く気づかなきゃいけないんです。
早い段階で気づくのと、ある程度進んだ段階で気づくのでは、ゴールへの角度が違ってくるんですよ。仕事も同じだと思っていて、大きく舵は切れないんですね、すぐには。なので、早い段階で気づくのが大事です。早く気づけば戻ってこられるんですよ。ある程度進んでからだと、強引に戻るか、いったん止めようということにしないと、迷っちゃうんですよね。

じん
今の話で気づいたのは、良いチームは気づけるような仕組みになっているんだよね。

いたる
そうなんですよ! 全員がゴールに対してアンテナを張ってコミットしているので、違うことに気づける。言える環境があるというのもそうですし、言える能力もみんなあるということだと思います。

じん
喚起する力もそうだし、それを聞くとか、受け入れるとか、それを「ちゃんと聞こう」ということだとか。
それがないチームはどんどん行っちゃうわけだよね。

いたる
一番やばい登山って、一人だけがリーダーのチームなんですよ。これはやばい!

じん
ああ! はいはいはいはい! 依存型だよね。

いたる
そうなんですよ! リーダーに完全に任せてるので、リーダーに能力があれば行けるんですけど。もしリーダーが間違ったときに全部間違っちゃうので。メンバーは間違ったことがわからないんですよ。本当の自立した登山のチームっていうのは、全員がゴールにコミットしていて全員が主体的に動けるんです。山登りでは「パーティー」と言うんですが、そういうのが本当の強いパーティーですね。

「強い人がいる」じゃなくて、強いパーティーっていうのはゴールをみんなが目指している。リーダーもミスしますから。進路を間違ったりしたときに、極端にいえば強く言ってでも戻すっていうことが必要です。

僕も2年前の雪山で、そんな経験をしました。5、6人のパーティーで、リーダーは優秀な経験者でした。誰もがその人について行けば大丈夫だと思っていました。山頂でホワイトアウトになって道がわからない。リーダーは「こっちだ」って行くんですけど、僕は違うと思ったんですよ。なぜかというと、僕はその年にその山を歩いたので、そっちじゃないとわかるんです。そっち行くと、逆にやばいんですよ。チームを率いている先輩の判断を僕がけなしちゃうと、相手の立場がなくなってしまうというのもあるんですけど。そのときは強く言って戻しましたね。怒鳴った感じですけど(笑)

リーダーは間違えるんです。リーダーは間違えるんだというのをメンバーが持っていないと、ゴールに自分たちの力で行けないですよね。

じん
リーダーはもともと能力が高いから信頼されているし、だからみんな着いていこうとするんだけど、ついていく人たちが依存してしまって自分で考えなくなっていく。それによって起こるエラーがものすごい損失っていうことだよね。そこにメンバーとしているんだけど、ただぶら下がっているだけになってしまうと、いる意義がないというか。ただ、ついていくだけの人になってしまうというか。より正しい選択や決断をチームでしなきゃいけないのに、そこに関して一切関与しないというか。それは非常にもったいないね。荷物はちょっと持てるかもしれないけど。

いたる
そうですね。組織も同じだなと(笑)

じん
本当同じだよね。

いたる
ただ強いリーダーがいて山頂に行ける人もいますから(笑) 何がいいのかわからないですけど。従来型の組織づくりがそういうのだとしたら、今のチームビルディングはメンバーの力が必要だったりとか。目指す方向がリーダーもよくわからなくなってきている場合もあって、そういうときにメンバーが助けてくれたりだとか、ありますよね。

じん
それこそもうホワイトアウトしたときに叫んでくれる仲間がいないと危ないってことだよね。企業も、チームも。

いたる
そっちじゃないよー! みたいな(笑)

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