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第27回『アスリート育成とチームビルディング(5)振り返りの勘どころ』

2016年04月07日

チームビルディングの話をしよう
※2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容お届けいたします。

※今回の『アスリート育成とチームビルディング(5)振り返りの勘どころ』は、
第23回『アスリート育成とチームビルディング(1)生きる力
第24回『アスリート育成とチームビルディング(2)親はどう育てる?
第25回『アスリート育成とチームビルディング(3)企業のチームビルディングとの違い
第26回『アスリート育成とチームビルディング(4)主体性と目標

の続きとなります。
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相馬浩隆さん(以下ヒロさん)
チームビルディングのプログラムを組む時に、受講者の年代や競技特性を考えてアクティビティを組んでいくんですけれども、まずはただアクティビティやるだけでも効果があると思うんです。普段見えない人間性が見られたり、お互いより良く知り合えたり、単純にみんなで夢中になる時間を共有する充実感だったり。でもせっかくやるのであればそこから得られるものを最大化したいと思っていて、やっぱりアクティビティをやったらしっかり振り返りをするのがすごく大切だと思うんですね。
この振り返りがもっと上手にできたらと思っていて、じんさんはそこはプロだと思うので振り返りの勘どころを聞きたいなと思っているんです。

 

河村甚(以下じん)
振り返りのために何をやっているのかというと、まずはアクティビティの中で起こっていることをじっくり見てます。例えば「何が起きているかな?」「どう感じているかな?」「関係性は?」みたいなところを。見ているといっても、チームに影響を与えないように柔らかく見ていたり、存在感を出して見ていたり色々ですが自分なりにチームで起こっていることを吸収します。

もちろんアクティビティの最中に関わりかけていったり、途中で切ったりみたいなこともやりますが「振り返り」については見ていて自分が「あれ?」と思ったことだとか「お?」って思ったことを聞く、興味を持ったことを聞くみたいなところがまずあります。その問いも自分の中から出てきたものじゃないと響かない。「こういう事言わせてやろう」みたいな意図を持った問いって研修だと使われがちなのかもしれないですけど、それって面白くないし、相手にも響かないから本気で答えてくれない。でも自分が感じたこととか興味を持ったことから生まれた問いだとその温度感は伝わって、ちゃんと応えてくれるってあると思うんですよ。

自分の中に生まれた好奇心に基づいた問いをする。何か言わせてやろうではなくて、素直な心で聞くという事が大切だなって思いますね。どんな問いをするかっていうところについては。

 

ヒロさん
好奇心って大事だと僕も思います。でも意図的にこれを考えさせたい、ってこともありますよね。たとえば成果を出すチームに必要なことを、アクティビティを通じて考えさせたいという意図があった時には、「どういう問いを投げかけたらそっちに向かっていけるのか」という事を考えるじゃないですか。そういう時に何か気を付けることはありますか?

 

じん
まず問いレベルで言うと問う前にその問いをよく理解しておくという感じですかね。その問いによって「本当に聞きたいことは何か」というところの理解を深めて自分の中の問うべき動機をしっかりと持っておくというところですかね。最初は「聞く必要があること」だったものを「聞きたいこと」にすり替える感じです。

あとちょっと違うレイヤーの話かもしれないですけど、僕が振り返り、リフレクションの場でやっているのは聞きたいことを引き出そうというよりも、参加者の中でいかに投げかけあって、聞きあって、コミュニケーション量の多い場をつくろうかという事を考えていますね。コミュニケーション量を増やしていくことで共有も進み、そのチームの本当の課題も見えてくるから。
最初の問いに応えたAさんが話し始めたあと、Bさんが何か思うところがありそうな顔をしていたら「Bさんどうですか?」と振ってみるとか。言いたそうな素振りの人の方を向いて話し始めやすいようにしたり。最初はファシリテーターが問いかけて参加者が答えるという形から始まったとしてもそれを参加者同士のやり取りにすり替えていくという感じ。ファシリテーターがいない状態で話が広がって行く感じにしていきます。軌道修正や必要と感じたところの関わりかけはしますけれど。

やっぱり基本その人たちの心の中で起こっていることに基づいてホットになっている部分、一人一人が主体的意識を持ったテーマ、そういった温度があるものを扱って、そこで話題が自分たちの中で展開していく状態を目指しています。そうするとぐつぐつと自分たちの中で変化が起こり始める。

 

ヒロさん
あり方を問うみたいなテーマがあるとしたら、そこについて一人一人が主体的意識を持てるようなアクティビティを選んで、振り返りではその主体的意識についてのコミュニケーション量を増やすように関わる、という感じですかね。

 

じん
まあそうですね。アクティビティであったり、誰かの体験談であったり、気持ちの状態を作った上で対話の場を作っていきます。その話題について気持ちの温度が上がっている状態で、ファシリテーター不在でも自分たちの中で温度感のあるコミュニケーションの流れが起こるように作っていく。そうすると多少ズレたりしてもそれがこの参加者たちの中で大事な事であって、それをちゃんと共有することが大切だと思っているという感じなんです。

 

ヒロさん
ファシリテーターの役割は、場づくりと触媒みたいな感じですね。

 

じん
そうですね。何か話させたいテーマがあるにしてもその場にある温度の高くなったところにあるものをちゃんと出し合った状態じゃないと本題にも入りにくいっていうこともあります。温度の高いところの共有がされるという事自体がチームビルディングにとってとても有効だと思います。
「振り返り」や「リフレクション」と言っても単純に起こったことを振り返ったり、次の行動に反映させるだけではないことをやろうとしてるんです。

 

ヒロさん
それは振り返りの中で今起こした行動のことではなくて、行動の根っこにある思いとか、あり方とか、その辺を掘り起こしたいという感じですかね。

 

じん
そうですね。入口はアクティビティの中で起こったことだとか感じたところだとかから行くんですよ。その方がパッと入りやすい。でも起こったことや感じたことの背景に一人一人の価値観、信念があったり、お互いの常識が違うという事があったりする。そこで意見のぶつかり合いが起こることもあれば「そんなこと思ってたの!?」みたいなことが出てきたりする。そういう広げていったり深まっていったり出来そうなことをできるだけ口を挟まずに促していく感じです。

ちょっと言いにくいことをあえて話してもらうように促していったりもします。あったかくなって来たり、誰かが自己開示し始めると他の人たちも開き始めるんです。そうしてどんどん開きあって深くしていく。そうして深く入っていくとちょっとテーマとズレていたとしてもいいところへたどり着くはずと思ってやってます。

 

ヒロさん
そうですよね。人と人との間には物理的に距離があるわけですから、それによって「この人はこう考えているだろう」みたいな先入観とか勝手な決めつけも起きると思うんですよね。スポーツの現場でもそんなことが起こることもあって、スポーツ選手って基本的には所属先を持っていて、ナショナルチームの選手であっても普段は別々のところで練習しているわけです。
そうすると「あのクラブの人たちは、ナショナルチームとしての勝利より、個人の成績だけ出ればいいと思ってるんじゃないの?」ってなっちゃうことがある。そういう誤解がナショナルチームのチーム意識を育てる足を引っ張ったりだとか、メンバー選考に私情や派閥が影響しているって疑ってかかる不信感につながる。

以前、誤解がおきやすい環境にある、ある種目のコーチに集まってもらって、お互いの先入観や決め付けを解消してもらうためのミーティングを開いたことがあります。そこではどうしたらナショナルチームが本当に強くなれるか、そこにそれぞれのコーチがどう貢献できるのか、時間をかけてそれぞれの本当の思いを出し合ってもらい、言いにくいことも言い合ってもらいました。それがきっかけてチームの雰囲気がよくなったという評価をいただいたことがあります。

 

じん
そこですよね。深めていくっていう意味だとホントは表に出さないそういう下心みたいなものも出しあえる状態に持っていきたいっていうのはありますね。それは反省として出てくるかもしれないし、言い訳として出てくるかもしれない。「今回の遠征では、同じような実力の選手の中からよく知っているこの選手を選んだんだ。自分が安心できるからね。でも、チーム全体のことを考えたら、良い選択ではなかったかもしれない。」みたいな本当は隠しておきたいことを言いやすい場を作っていこうという感じですね。
ありますよね。そういう隠している思惑って。

 

ヒロさん
やっぱりコーチだったら自分が指導している選手に活躍してほしいですよね。そうなれば自分だって鼻が高い。だからたとえば合宿にいろんな所属の選手が集まっているのに、自分の所属の選手だけ、特に力を入れて指導したい気持ちがあるのはしょうがないと思いますよね。ナショナルチームに貢献したい気持ちがあったとしてもです。

 

じん
共有が深まっていくと全体としての一体感も生まれて、全体としてこれが大事だよねっていうところへの意識が高まってくると思うんですよね。それがない状態だと最初はもしかしたら「自分がいい成果を出すためならほかの人は蹴り落してもいい」というくらいのところにいるかもしれない。でも共有が深まっていくと少なくともそのチームで取り組んでいることについては相手と自分が一体になるとか、境目がなくなる。そこまで行ければそれは凄いことかもしれないけど、チームになっている時ってそれに近い感じ。だからそこまで行ければ理想的だなと思って開きあえる場づくりをしてますね。

 

ヒロさん
多分優れたリーダーっていうのはその辺が上手なんだろうなと思っています。つまりみんなが価値を感じる具体的な目標を共有させて、それぞれにその目標を「自分ごと」にさせる。つまり目標達成することの自分にとっての意味や、そのためにすべきことや捨てることをそれぞれが理解している。そんな状態になったら、下心にこだわってられなくなりますから。そんなことがうまくできる人なんだろうなって感じはしますよね。

 

じん
そうですよね。下心は全然持ってていいと思うんですけど、それを見せあえるようになって行くとチームは一歩深いところへ進んで行けますね。

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